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闇の子供たち




監督:阪本順治/渋谷シネマライズ/★4(71点)
本家公式サイト

ザラリとした舌触りの映画。月、黒ビニール袋、手をつなぐこと、鏡
阪本順治ほど黒ビニール袋の扱いが巧い監督はいない。
私が阪本順治に惚れたきっかけは『トカレフ』で、ゴミ回収の黒ビニール袋シーンに痺れたのでした。こんな少ない描写で表現するんだ、と。
やっぱりねえ、半透明のゴミ袋じゃドラマにならんのですよ。喜んでるのは烏だけ。
もっとも、ゴミ袋で人を捨てる映画を阪本順治以外で観たことないけど。

久々ザラリとした舌触りの映画で楽しかったのですが(<不謹慎な)、阪本順治らしからぬ親切な映画で、いやまあ最近そうなんだよな、阪本順治ファンからすると分かりやすいというべきか。

早い段階で子供の手をつかんだ一瞬の回想が入ります。これで男の過去を暗示する。
「子供が好きなんですね」という言葉を受ける表情。「君を裏切っている」という謎の告白。「ノックぐらいしろよ」と言う動揺。「息子さんですか?」と聞かれた時のドアップ。
オチが蛇足に思えるほど、男がどういう人間か観ていて分かっていた。
(ついでに言うと、現地のボランティア男の登場がスローモーションで、「こいつもタダモンじゃないな」と早々に分かる)。

だから、その後の心の動きもよく理解できるのです。
宮崎あおいタンが子供の手を引いて逃げるシーンがあります。手と手を取り合って走るのです。
男はそれを見て、自分が一方的に「手首」をつかんでいたことを思い出すのです。

そして「どうせ自分探し」の「バカ女」あおいタンに「自分に嘘をつきたくない」(<ウロ覚え)と言われ、自分が嘘をついて生きていることを再認識させられるのです。

月は裏側の顔を見せません。

これは、個人の裏側と、社会の裏側を描いた映画です。
冒頭の(そして時折挿入される)月はそう物語っているのでしょう。

鏡の周囲へ貼り付けた新聞の切り抜き。
男が「自分への戒め」としてきたのであろうその様は、一人の男の“裏側の顔”を観客と登場人物達に知らしめると同時に、鏡に映された顔によって登場人物ばかりか観客である我々も何かしら“裏側の顔”があることを暗示しているのかもしれません。

姉妹のこと、親子のこと、人の尊厳について、貧困について等々、大変語りがいのある“話”ですが、私には荷が重すぎるので、あくまで一登場人物に関する“映画”の表現に的を絞って書いてみました。
(言ってることは黒ビニール袋だけだな)

2008年8月2日公開(2008年 日)

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