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スカイ・クロラ




監督:押井守/新宿ミラノ1/★5(75点)本家公式サイト

言いたいことやりたいことがちゃんと物語に昇華(消化)され、望んでいた押井映画の姿がほぼベストな形で提示された。
あなたを待っていたわ。

俺が言いたかった。俺がこの映画に言いたかった。世間ではかなり賛否両論だが、俺はこういう押井映画を待っていた。本当は乱暴な押井節も嫌いじゃないんだけどね。ワハハハ。
空中戦だけでもかなり満腹。だって一瞬カメラがピンぼけになったり見失ったりするんだぜ。興奮した。
本当は星4.5くらいなんだけどね。大甘大甘。ワハハハ。

このところ、押井守のテーマは一貫している。

『GHOST IN THE SHELL』では、人間を人間足らしめる重要な要素として「記憶」をキーワードとして挙げ、本作もそれが踏襲される。
現実と虚構(本作ではゲームの如き戦争)の境界は『アヴァロン』で、日常と非日常(戦争)の境界は『パトレイバー』で描かれた。
いや、これら全て、既に『ビューティフル・ドリーマー』で網羅されていた。
我々の前に、押井神が降臨した瞬間だ。

これらを総括して言うと「存在の不確かさ」なんだと思う。

私が押井作品を好きな理由は、「存在の不確かさ」が登場人物という「人間」の問題に至るからだ。
(『パトレイバー』は都市論として語られることが多いが、それも、人間を人間足らしめる重要な要素としての「居住空間」(<住まいを転々とする男の物語がそれを証明している)の不確かさを暴くことで、人間の存在の不確かさの物語となっている。)

登場人物ではなく押井守自身の自己の問題に偏重する時もあるが(たいがい押井自身の脚本だ)、社会や世界やましてや自然などの問題ではなく、常に「人」の「存在」を問うている。このスタンスは変わっていない。そしてそれは観る者(俺)の問題でもあるからだ。

ここから急激に勝手な押井総括になるが、彼の描く「存在の不確かさ」は、幼い頃から東京湾が埋め立てられていく過程を見て育ったことや、終焉に向かう学園紛争を目の当たりにしたこと(高校時代に成田闘争に参加しているそうだ)に起因するのかもしれない。
それはもちろん社会や世界の問題なのだが、他人事ではなく「個人を取り巻く問題」「個人に関わる問題」として捉え、自身の血肉になったところに押井守の才能があるのだと思う。
そしてまた逆に、自分自身が関わった問題を作品に転化する才もある(失敗するときも多々あるが)。

本作を作るに当たり、押井守自身にどんな心境の変化があったかは分からないし知りたくもない(知る必要もない)。結果としての作品があればいい。
そして作品は、言いたいこと(いつもの押井節)やりたいこと(空中戦その他)を、きちんと物語の中に昇華(消化)して見せてくれた。
その最たる例は、死んだ愛犬ガブリエル(らしき犬)を、これまでのどの作品よりも自然で違和感なく登場させている点だ(<そこかよ)。

余談

kiona氏が「巨大な力や自分の限界に抗う者の心情をお耽美に描いちゃうセンチメンタリスト」と的確な評をしていて大いに賛同するのだが、私は『春の雪』のコメントで三島由紀夫について「巨大な壁の前で敗れ去る若者に美学を見出す」と似たようなことを書いている。
偶然にもこれ、脚本が共に【伊藤ちひろ】。
実際には、『春の雪』を観た押井守が気に入って、行定の秘蔵っ子【伊藤ちひろ】(本業は小道具)にアプローチしたそうだ。
彼女には初の他流試合(本人談)だったそうで、本作でも脚本監修に行定の名がクレジットされている。

2008年8月2日公開(2008年 プロダクションIG=日テレ/ワーナーブラザース)

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