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崖の上のポニョ




監督:宮崎駿/渋東シネタワー/★1(20点)
本家公式サイト

辻褄は意味不明なくせにやりたいことや言いたいことだけは手に取るように分かるのが腹立たしい。小賢しい。全く小賢しい映画。
地引き網のシーンがあります。泥やゴミを巻き込む地引き網。
「またか。またそれか。」
早々にプッツリ気持ちが切れました。ポニョより先に寝そうになった。

「自然と人間は共存できるか」という長年の自身のテーマに「共存できない」とも受け取れる結論を『もののけ姫』で出して以来、それまで描いてきた“理想としてのあるべき姿の自然”から“現在の醜悪な(人間に汚された)自然”を描くことが多くなった宮崎御大。
またか。まただよ。ストーリーや人物描写はおざなりなのにこういう描写だけ丹念だ。小賢しい。もう分かったよ。ウンザリだ。

「脚本(ホン)は酷いが画面(えづら)は凄い」「晩年の黒澤かフェリーニか」「年寄りの妄想」「狂ってる」「まったく狂ってる」というもっぱらの評判で、これ以上余計な情報が耳に入る前に観ようと劇場に足を運んだ。
だから、難しいことも考えずに単純に画面を受け入れよう、子供に帰った心持ちで観ようとした。
だが、その破綻を笑い飛ばせるほど俺は大人じゃなかった。子供に帰ってなかった。どっちなんだ?
いや、聞いたどの前評判も“正解”だったんですよ。正解であるが故、知ってる情報以上のことはこの映画になかった。

非常にシンプルな話で、「地球規模でヤバイことになってる」この世界を「子供達(=未来)に託した!」という老人からのメッセージだと思うんです。

ただ何が狂ってるかって、5歳児に決断を迫るんですね。「半魚人でもいいのか?」「Yesか?Noか?」って。
危機の根源はポニョの魔法で、それを封じる手段が人間にすることなわけですから、これはイコール「地球の存亡を引き受けるか?」「Yesか?Noか?」ってことですよ。
責任能力の無い5歳児に何を背負わせてんだって話ですよ。おまけに一人の女の人生も背負うハメになるわけですよ。

ところが女の方には何の覚悟もねえんだ。
人間の血を舐めたのも偶然なら、人間になることで失う物があることの自覚も無い。
ウチのヨメなんか「なんだこの馬鹿女。死ね!死んでしまえ!」と激昂していて、「なんだ、感情移入してんじゃん」と気持ちがプッツリ切れて覚めて観ていた私は変に感心しました。

裏で母親同士が何らかの密約を結んでるのかもしれませんがね。仮にそうだとして、そういう逃げ道を用意しているのも小賢しい。
そんな大人の思惑で動かされてるとも知らずに、5歳男児は迷いなく「Yes I do」言うわけですよ、『ゴッドファーザー』ばりに。「君がチュキだから〜」「妻をめとらば(柳沢みきお)」とか言うわけですよ。
いやいやいや、そこは「お父ちゃんのために」じゃないんかい。何のために父ちゃん漁師の設定にしてんのよ。「泣いて馬謖を斬る」ってのが筋ちゃうんかい。「そんな半魚人女気持ち悪いけど家族のために望まない結婚を飲むよ。ゴキュゴキュ」って言うべきじゃないんかい。いや、そこまで言わんでも。

要するにドラマ性を排除してるんです。そのために、そのためだけに5歳児を使ってるとしか思えない。小賢しい。まったく小賢しい。

私は人の親でないので分からないのですが、例えば「そもそもどうしてポニョは家出したの?」とか疑問を子供に投げかけられて、世の親御さんは返答できるんですかね。
おぼろげに説明はしてるんですよ。父が元人間=陸を知る血が流れてる、とか。
小賢しい。そういうチマチマした理由付けが小賢しい。「プロパンガスだよ」とか。小賢しい。
「お母さんの食べたものがオッパイになって赤ちゃんが飲む」なんて説教臭い台詞、小賢しいを通り越して「うるせえよ!」と言いたくなった。というか、実際言った。

『トトロ』をリアルタイムで劇場鑑賞した時は凄かった。
上映が始まると騒いでいた子供達は水を打ったように静まり、一斉に歓声をあげ、笑い、息を殺して見つめていた。全ての子供たちが食い入るようにスクリーンを観ていた。
そのライブ感たるや下手なバンドより凄まじかった。「すげえ。映画ってすげえ。」と思った(ま、たまたま私の行った映画館だけかもしれませんが)。
御大の望んだ「子供の反応」はあの時の状況だったのかもしれない。
じゃあ何でドラマ性を排除するのさ。子供だってストーリー追ってるよ。
「あの時の栄光をもう一度」「あの素晴らしい愛をもう一度」とか思うのが年寄り臭いんですよ。あと、こういうダジャレはオヤジ臭いんですよ。
もう20年も昔の話ですぜ。メイだって都会でOLやって、悪い男の一人や二人に騙されてる年頃ですよ。

いや、いいっちゃいいんですよ。話が破綻してても。
だけど、大筋は見失ってるくせに、「人間の血を舐めた」とか「ウヒヒヒ、これが満タンになったら海の時代の再来だぁ(<ポニョ父)」とか、いちいち細かい理由付けが小賢しい。小賢しくて嫌になる。諦めが悪い。もういい爺さんなんだから、少しはフェリーニや清順を見習いなさいよ(<それはそれで間違ってる)。

ポニョという名の『風の又三郎』が現れて、何の変化が起きたろう?老人の足が治っただけじゃね?
「生まれてきてよかった。」どころか「観なきゃよかった。」

口直しに『ベルヴィル・ランデブー』を再鑑賞したよ。萩尾望都先生の「イグアナの娘」を読み返したよ。見失いかけたアニメの魅力と物語の魅力を再認識したよ。ありがとう。ありがとうポニョ。

2008年07月19日公開(2008年 ジブリ)

comments

こんにちはMMさん。こんなところまでようこそ。
荒らされることがあっても賛同者がいらっしゃるとは思っていませんでした。
宮崎映画というかジブリ映画は影響力が大きいので、賛否いずれも反感買うんですよね。

シネスケで高得点を付けていらっしゃる方でも、同意見の方は大勢いるんですよ。5点の甘崎庵さんとか。全く同じこと言ってるんですけど、それを楽しめたか楽しめなかったかだけの違いなんですよね。

MMさんがおっしゃる通り「千と千尋」以降、御大は別人ですね。実際「もののけ」後に引退を考えたそうですし。
ある意味正しく「巨匠病」になってるのかもしれません。

  • ペペロンチーノ
  • 2008/08/06 4:02 PM

こんにちは!シネスケから流れてきました。
というのも、この批評が私の感想とピタリと合うからです!
「千と千尋」以降の宮さん、枯れましたね。
わたしも「ベルヴィル」で口直ししなきゃです。

  • MM
  • 2008/08/06 3:13 PM
   

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