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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド




監督:ポール・トーマス・アンダーソン/日比谷シャンテシネ/★5(90点)本家公式サイト

PTAはキチガイだ。
映画は、ツルハシを打ち降ろす所から始まり、ボウリングのピンを打ち降ろす所で終わります。
自らの手で運命を切り開いた男が、自らの手で終焉を迎える物語なのです。
だから、必然として“神の奇跡(=天の配剤)”を拒絶するのです。

ダニエルは言います。「早く金を稼いで、人から遠ざかって暮らしたい。」
私は100%共感する言葉なのですが、同時に、本当は孤独を求めていないことも分かります。
子供、弟と名乗る男、再び子供と、常にパートナーを持ちたがります。
しかし、正面切って「家族」「血縁」とは言わず、“パートナー”と呼ぶ。
「子供の育て方に口を出すな!」と言いがかりに近いキレ方をし、真剣に子供を救出しようとすることから、家族や血縁に強い憧れを抱いていることも分かります。
でも、その憧れを他人に悟られるのが嫌なのでしょう。

これは、不器用な男の物語なのです。

もしかすると、これはPTA自身が投影されたキャラクターかもしれません。
ぶっちゃけキチガイです。

例えば油井炎上シーン。今時、キチガイの極みです。

CGとか使ってる箇所もあるんだろうけど、吹き出した石油で一瞬カメラのレンズが汚れるんですよ。うわ、リアルにカメラ泥水かぶってるよ。しびれますよ。しびれポイントですよ。
炎上シーンは途中で光線の加減が変わるんですね。え?リアルに燃やしてる?やっぱりあれはリアルに油が燃えてる黒煙だよね?一晩経て朝に消化したように見えるんだけど、一晩燃やし続けたの?2度3度燃やし直したの?しかも消化(爆破)はワンカットでやってるよね。
大変な撮影してるな。つーか、キチガイ沙汰だ。
PTA37歳。コッポラがナパームで森林燃やしたのがたぶん39歳頃だから、早熟の監督はどっかで頭がオカシクなるんですよ。黒澤もそうだし。

ドカーン!とかボカーン!とかいうシーンに麻痺してると気付きにくいんですが、この炎上シーン、出来事としてショッキングなだけでなく、演出としてもショッキングなんですね。『サイコ』のシャワーシーンと一緒です。そしてそれは、映画として重要なターニングポイントなんです。PTAはそれを心得てる。

またこの炎上シーンが美しいんだ。映画は“神の奇跡”を否定しますが、このシーンは映画の神様が舞い降りたシーンだと思うんですね。こういう瞬間が来るんですよ。コッポラや黒澤がそうだったように。

音楽(レディオ・ヘッドの奴かよ)の選び方・使い方、構図のとり方、長回しの使い方、一転して短いショットの重ね方、しびれた。面白かった。

この映画や『ノーカントリー』みたいな映画をやっと選べるようになったアカデミーも成長したな。

余談

ダニエル・デイ=ルイスも狂ってたね。
一時期廃業してイタリアで靴屋の修行してたそうじゃない。狂ってる。みんな狂ってる。

日本公開2008年4月26日(2007年 米)

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