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Ray/レイ




監督:テイラー・ハックフォード/BS/★4(77点)
本家goo movie

ソウルを歌うダメ人間
テレビをつけたままにしていたら放映が始まり、何気なく最初の10分、いや5分見てみたら、やや、これは面白そうだぞ、面白そうな匂いがプンプンするぞ、ということで2時間半の長尺を観きってしまった。今となっては映画館で鑑賞しなかったことを後悔しているくらい。変な先入観持っちゃいけませんね。

1990年前後、大学生の私は友人と、レイ・チャールズのことを「ブラザー・レイ」と呼んでいました。「兄貴!」ってわけです。顔見知りでもないのに。「兄貴」と言えばレイ・チャールズ、「お兄ちゃん」と言えば(若乃花じゃなくて)西武のピッチャーの松沼兄、という時代があったんです。いや、時代ってほどのもんじゃないけどさ。

そういうわけで晩年の来日公演にも行った私ですが、この映画の公開時は「ケッ!」って言って観ませんでした。
「死んだら急に映画作りやがって!」ってなもんです。「人の死で商売しやがって」ってなもんです。誰だよ監督。テイラー・ハックフォード!?『愛と青春の旅立ち』でお馴染みの?古いなオイ。あとなんだっけ?えーっと、『ディアボロス』でお馴染みのテイラー・ハックフォードかよ。つーか、『ディアボロス』でお馴染みなのか?

後で知ったのですが、この映画、企画から完成まで十数年かかっているそうです。私が「ブラザー」と呼んでいた頃からってことです。レイを演じられる役者の登場を待っていたそうです。
その間、レイ・チャールズ自身もオーディションに立ち合ったり、「美化しないでくれ。ダメな自分をちゃんと描いてくれ」などと口を挟んだとのこと。結局、映画の完成を見ることなく亡くなったわけですが(もっとも、生きてても見られませんが)。

その結果、見事に「美しきダメ人間」映画に仕上がっていました。
どうやら私は、偉人伝やヒーロー物よりもダメ人間映画が好きみたいです。

興味深いと思ったのは、構成が『ゴッドファーザー PartII』に似ている点です。
自身の成功物語(の光と影)にインサートされるルーツの物語(本作は幼少期の母、『ゴッドファーザー』は父)。
そしてこの映画では、弱いダメ人間の自分が強い人間に変わろうとする瞬間を、己の“ルーツ”に帰ることで表現します。とても上手な構成です。とてもテイラー・ハックフォードだとは思えません。

また、「どうよ、大理石の暖炉」とか「バーカウンターもあるぜよ」みたいな家やオフィスの「豪華自慢」が何度か登場しますが、単なる「成功者の証」なら長い映画なのにそんな説明ゼリフいらんだろう、と思えるのです。
おそらく、この豪華な空間で人間関係が壊れていく点に、“成功物語の光と影”が集約されているのでしょう。
不倫関係を妻の前で晒されるのはプール付きの庭で、兄弟同然の仲間を解雇するのは豪華オフィスで、というわけです。

強い自分になろうともがき苦しむ場所が「質素な療養所の個室」というのも一連の流れでしょう。上手です。テイラー・ハックフォードなのに。

(2004年 米)152分

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