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サウスバウンド




監督:森田芳光/新宿ガーデンシネマ/★3(65点)
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森田芳光自身が上原一郎に重なる。アナーキストはロマンチストでもある。
トヨエツ演じる父親・上原一郎は80年代のアナーキストだったという設定。おそらく三里塚か成田闘争辺りで活動したのだろう。
そんな彼の家庭を描く森田芳光の手法は、まるで『家族ゲーム』時代に戻ったようなカメラワーク(特に東京編が顕著)。
ここ最近、オーバーラップを多用した流麗なカットつなぎやデジタル処理で「巧さ」を強調していたのに、本作では意識的に原点回帰の素朴(とは言い難いが)なカット割を狙っているように思える。伊藤克信を久しぶりに登場させたのもその刻印に違いない。

なぜなら、森田芳光自身が80年代映画界に於けるアナーキストだったからだ。

しかしそこにあるのは単なる懐古趣味ではない。
物語が新たな闘争へ進んでいくように、森田芳光自身もまた新たな挑戦に歩を進める。
例えば、森田芳光が子供目線で映画を作ったのは、おそらくこれが初めてだろう。
例えば、「都会派」森田芳光が大自然を舞台にした作品を撮るのも珍しい。

少し横道にそれるが、自然舞台に関して言えば、南の島は『メインテーマ』という傑作を世に送りだしているので少しは得意らしいが、北の自然を舞台にすると『海猫』のようなヒドイざまになる。
その原因は何かと考えると、森田芳光作品は室内で物語が進行することが多く、おそらく、室内の閉塞感と都会の閉塞感がリンクし、カメラが外に出ることによって閉塞感からの開放が生み出されているのだろう(『の・ようなもの』の夜の街を歩くシーンなどは典型的な例だ)。これまたおそらく、それは無意識のうちに行われており、南の空は問答無用の開放感があるためマッチするが、北の空にはそれが無いためダダスベリになってしまうのだろう。ま、本作と直接関係ない話だが。えーっと、何を話してたんだっけ?

理想主義を掲げるアナーキストは、一種ロマンチストでもある。80年代パンクロックグループのザ・スターリン遠藤ミチロウも「吐き気がするほどロマンチックだぜ」と歌っている。いや、それとこれとは関係ない。関係ないのだが、80年代の“時代遅れ”アナーキストは、時代遅れであるが故、より理想主義的なロマンチストであったように思える。

そんな彼らが親の世代になった今、子供達はどうだろう。
この映画は、子供達が非常に「現実的」な思想回路の持ち主として描かれている。象牙は一生モンだなんて言ったりする。
もしかするとこの映画、破天荒な父親を媒体として、「もっと夢を持て」と子供達に語りかけ、「もっと子供達に夢を持たせろ」と(80年代に青春を謳歌した)親の世代に語りかけている映画かもしれない。

アナーキストとして予定調和的に話が進んでいくので、正直、ストーリー自体はそれほど面白いとは思えなかったのだが、原作を読んでいないので本当のところこんな話なのかどうか分からない。
ただ、同じ原作者の精神科医伊良部一郎シリーズを映画化した『インザプール』と「病める都会人の開放」という共通テーマがあるような気がする。

2007年10月6日公開(2007年 角川映画)


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