November 2018  |  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

トランスフォーマー




監督:マイケル・ベイ/新宿バルト9シアター8/★2(30点)
本家goo movie公式サイト

もうどうでもいいや
スピルバーグがね、変形ロボットのおもちゃにハマったそうですよ。「子供のおもちゃを取り上げて夢中になった」とかで。
で、その企画を持ち込まれたマイケル・ベイは「スピルバーグのおもちゃ映画なんか撮れるか!」って最初思ったらしいが、「脚本を読んだら人間が描けている」と思ったので受けたそうですよ。

えーっと、マイケル・ベイって、今まで一回でも人間を描写できたことなんかあったっけ?

いや、話がどうこうよりもね、「久しぶりに観たらマイケル・ベイ下手になったな」というのが最初の感想。よくよく考えてみたら、それも納得できるんだけど。

マイケル・ベイの特徴ってケレン味だと思うんですよ。ここ一番でスローモーションなんか使って「どーだー!カッコイイだろー!」「どーだー!泣けー!」とかいうシーン。たしかにスピード感もマイケル・ベイの持ち味ではあるんだけど、それでもどこかベタベタした「どーだー!」ってこれ見よがしなスピード感なの。
ところが一方スピルバーグは(最近よく書いていることだが)最近これ見よがし色がほとんど無い。「やっぱりスピルバーグは巧いなショット」は多々あるんだけど、「やっぱりスピルバーグは巧いな」なんて思ってる余裕のない「やっぱス」くらいのうちに次々と物凄い勢いで「やっぱりスピルバーグは巧いなショット」をぶち込んでくるの。でも個々のショット(シーンではない)は物凄く巧いの。

で、結局、マイケル・ベイが「どーだー!」ってやりたいのに「どーd」くらいでスピルバーグ御大に押さえられてる感じがする。

例えば冒頭に出てくる子供が産まれたばかりの兵士のエピソード(あれは『アルマゲドン』の自己パロディーなのだろうか?)。主人公が誰やら分からなくする要因の一つであるまったく無駄なエピソードなのだが、本当はマイケル・ベイ、最後にもっと活かしたかったんだろうなあ。
何だかいう主人公の愛車ロボが拉致されるシーンなんか、スローモーションとか使って「どーだー!」ってやりたかったろうに。せいぜいジョン・ヴォイトが何かに乗り込むか何かするシーンくらいですよ、スローモーション。「そこかよっ!」って思わず映画館で突っ込んじゃった。

そんなスピルバーグ御大に頭押さえつけられた(と思われる)マイケル・ベイは、「それでも俺の本領はケレン味だ」と(思ったかどうか知らないが)、まあ、無駄にカメラが動く動く。それも彼の持ち味ではあるんだけど、スケール感を出す地上から俯瞰への移動ショットをやたら多用するんですよ。

ところが、そこには誰の視点も無いんだな。

脚本上もそうなのだが、カメラポジションも視点が不確かなのですよ。
観客にしてみれば、派手な爆発一つあるより、地味だけど主人公と一緒になって追い詰められる感覚の方がハラハラドキドキするんですよ。
ところがこの映画、観客を物語に巻き込む努力がない。そういうポジションにカメラがない。
あのねえ、街をぶっ壊すシーンなんて(金さえあれば)誰でも撮れるんですよ。難しいのは「どう撮ったら観客に伝わるか」ってことでね。これはアート映画よりも娯楽映画にとって重要な“視点”のはずなんだがなあ。子供映画だからこそビビッておしっこちびるくらいに観客を物語の中に置いてくれなくちゃ。マイケル・ベイはそこんとこ分かってる人だと思ってたんだけどなあ(好きか嫌いかは別として)。だから観ていて「下手になったな」と思ったし、「こんなボンクラ男と尻軽女、どうなったっていいや」と思っちゃった。

観客を物語に見事に巻き込んだ、例えば劇中しばしば単語として登場する『エイリアン』なんかは「もうどうにでもしてくれ!」って思うんだけど、こういうノレない映画だと「もうどうでもいいや」って思うもんなんだな。
だいたいさあ、マイケル・ベイは軍隊や銃器には興味があってもメカには愛着なさそうじゃん。

余談1

スピルバーグ自身は『宇宙戦争』で似たようなことやっちゃったから監督しなかったのかもしれないが、『ニューヨーク東8番街の奇跡』(古いな)もそうなんだけど、ロボット好きなくせに「メカ物」って自分で監督しないよね。

余談2

まったく無駄なエピソードと書いた子供が産まれたばかりの兵士のエピソードなんだが、そのせいで「生きたい」と思って戦闘から逃げ出す、というエピソードにして初めて「人間を描写する」って言うんじゃないのかい?マイケル・ベイさんよ。

日本公開2007年8月4日(2007年 米)

comments

   

trackback

pagetop