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フラガール




監督:李相日/目黒シネマ/★4(72点)
本家goo movie

「シーン」が良く出来た映画。2006年邦画の代表作であることに異論はない。
正直、『三丁目の夕日』とか『パッチギ!』とかこの映画とか、「そんな昭和物ばっかりいらねえんだよ!お安い安定感のお涙頂戴映画ばっかり作りやがって!」と思って観てませんでした。李相日の映画も好きじゃなかったし。

二番館で『かもめ食堂』と一緒に観たから強く感じたのかもしれませんが、予想外に『かもめ食堂』は肝心なところでベラベラしゃべるのに比べ、この映画はここ一番でしゃべらない。

例えば夕張に行く徳永えりのシーン。松雪さんは黙って抱きしめるだけ。蒼井優先生も「じゃーなー」だけ。荷物を届けに来た富司純子も黙って置いていくだけだし、松雪さんの列車のシーンでは、「フランダンスは手話」という伏線をきちんと活かしている。

あ、ちなみに松雪さんはですねえ、全然無名の頃に深夜ドラマか何かで見初めまして、ファンだったんですよ私。ええええ、まだ「白鳥麗子」以前でしたから15年以上昔、彼女も二十歳前後くらいでしたよ。その頃松雪さんと勝手に呼んでいて、メジャーになって女優としてもいまいちパッとしなかったので松雪泰子と呼んでいましたが、今回は久しぶりに松雪さん。松雪さん美しいなあ。劇中でも「いい女になった」という台詞がありましたが、『カルメン故郷に帰る』みたいな最初の頃からいい女だった。スクリーンに大写しになる度「松雪さん美しい松雪さん美しい」と思いながら観ていた(<1番前の席かぶりつきで観てる奴)。多くの方は蒼井優先生の映画とおっしゃいますが、私には松雪さんを堪能する映画でした。今回は「東京から来た女」感がとてもはまってたんですよ。うんうん。どんくさい田舎娘の中で総てが美しかったですよ。田舎娘達は太めの眉なんだけど、松雪さんはシュッって細く書いてんの。あとねえ、ちょっとワシ鼻なの。ああ、俺、この手の顔に弱いんだ。演技がどうとか踊りがどうとかじゃなくて松雪さんの顔が好き。大好き。いっそこのレビューをそれだけで埋めつくしたい。

えーっと、それで、何だっけ?

ああ、そうそう。ここ一番でしゃべらない件。
映画は台詞ではなく、映像で語るのです。
それは映画が映画である重要な“シーン”なのです。
話がベタなのと表現が下手なのは違う。この映画は(話はベタでも)シーンの表現はとても上手だった。“画面”で見せる努力をしていた。
『三丁目の夕日』なんかラジオドラマかってんですよ。

蒼井優先生は、たしか日本アカデミーか何かの場でこう述懐している。
(こうした情報を得てしまっているのは、後日鑑賞した者の変な先入観を持ってしまう難点なのだが)

「踊りのシーンが壊れたら映画全部が壊れると思った」

これは松雪さんのシーンも一緒で、生徒が先生に感化される場面、母親が娘を赦す場面、客がフラガールを認める場面、すべて我々観客が納得できる躍りでなければならない。
つまり「見応えのあるダンス」だけで評価できるのはミュージカルで、こうした話の場合は「(観る者に対し)説得力のあるダンス」が必要なのです。劇中の人物と一緒に、我々観客も感じ入るダンス。そしてこの映画は、それを文句無く見せてくれたと思うのです。

こうした各“シーン”は“映画”として大変よく出来ていて、それ故感涙にむせぶ場面も多々あるのですが、全体がすっきりまとまっているかと言うと、(既に何人か指摘しているように)私もデコボコしている感じを受けるのです。

(これもまた後日鑑賞した者の難点なのですが)李監督曰く、最初は3時間の大作になっちゃったとか。「2時間じゃなきゃゼーッタイ駄目!」とシネカノンにきつく言われて一所懸命削ったそうですよ。

これを知ってたからそう感じたのか、知らずに観てもそう思ったのかは分かりませんが、ゴールに向けて様々な要因がスパイラルしながら一つになっていく感じは受けなかった。
親友が夕張に越していくエピソード以降は、唐突に事象が現れ、その唐突感故「(泣かせの)お約束ポイントクリア!」感が生まれたのではないだろうか。
各シーンが上出来なだけにもったいないことこの上ないが、じゃあ3時間版を観たいか?と言われても、多分冗長で失敗してると思う。

まあ、最後ちょっと悪くいいましたが、結論はその優れた“シーン”の数々によって、この年の代表作と呼ばれてもいい映画だと思います。
『三丁目の夕日』や『パッチギ!』には異論があるが、『フラガール』なら異論はない。松雪さん以外は俺の映画ではないが、良く出来ている。泣いたよ。

2006年9月23日公開(2006年 シネカノン)

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