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鉄コン筋クリート




監督:マイケル・アリアス/渋谷東急/★4(88点)
本家goo movie公式サイト

なんだこれ?なんだこれ?ビックリした。ビックリし通しの映画だった。
まず蒼井優にビックリした。
何の予備知識も持たずに観たので様々な俳優達が声を当てていたことをスタッフロールで知りビックリしたのだが、それ以上にその誰も彼もが違和感の無い声を当てていたことにビックリした。
アニメは声を張るものと相場が決まっている(実写と異なり表情で表現することに限界があるためハッキリ声で伝える必要がある)のに、皆が抑制した声で話す。
それがとてもシックリしている。
最近のジブリなどは役者の個性が強すぎて麺とスープが馴染んでいないラーメンみたいな声当てなのだが、この映画はキャラクターに生命を吹き込んだ声になっていたと思う。

次に、時折見せるドキュメンタリー風のカメラワークにビックリした。
このキャラクター造形でドキュメンタリー風もアニメでカメラワークもないもんだが、とにかくリアルでビックリした。

基本的に私はアニメを特別視しない。つまり、アニメだから殊更好きなわけではなく、かといってアニメを卑下するわけでもない。あくまで実写と同列の映画の一ジャンルだと思っているのだが、実写とアニメはその製作過程の違いのため根本的に別物とも言える。
実写は「実在する被写体を切り取る(撮影する)」ものだが、アニメーションは「被写体を作る(描く)」ことから始めなければならない。
それは単なる労力の違いではない。アニメには「偶然の産物」「予想外の効果」というものがほぼ皆無なのである。
また、海の中でも空の上でも簡単に描けるアニメと異なり、実写は「カメラの制約」がある。カメラは泳げるわけでも飛べるわけでもない。

長々と何を言いたいかというと、例えば『仁義なき戦い』の手持ちカメラ。あれは「カメラの制約」の中で可能な限り動き回り、偶然の産物として「実録風」に迫力ある映像として仕上がっている。
『鉄コン筋クリート』はアニメなのにそれをやったのだ。
意図的に「偶然の産物」を装いリアルな迫力と緊迫感を生み出す。
そんなアニメ初めて観た。だってカメラがコケルんだぜ。ビックリした。
私が知らないだけかも知れないが、こんなにカメラワークを意識したアニメを初めて観た。

おそらく技術的に最も大変なのは「縦移動」だと思う。例えば路地をカメラが疾走するような映像(ぱらぱらマンガの理屈を考えれば遠近を移動する絵の難しさは想像できると思う)。CGなら簡単に出来るかというとそうでもないらしい。実際、多くのアニメでスムーズな縦移動は滅多にお目にかかれない(だから押井守は実写『ケルベロス』で犬目線縦移動をやりたかったのかもしれない)。
おそらく日本で最初にCGを使ったスムーズな縦移動をやったアニメは『もののけ姫』で、そのパートを手がけたのは本作の監督マイケル・アリアスなのだそうだ。

私が技術論を終始語っているのには理由がある。
あんまりビックリし通しで、物語を読み解く余裕がなかったのだ。
(原作未読の身からすれば、その「哲学」にあまり共感しなかったというのもあるが。)

2006年12月23日公開(2006年 日)

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