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硫黄島からの手紙




監督:クリント・イーストウッド/新宿ミラノ1/★2(35点)
本家goo movie公式サイト

そこにビタイチ狂気なし。なんだ、しょせんハリウッドの間違った日本描写映画だ。
赴任してきた渡辺謙が飛行機から降りる。実際飛行機で島に来たのかもしれないが、司令官が飛行機からやってくるというのは日本人にとって戦後の情景だ。コーンパイプのオッサンことマッカーサーだ。「ああ、やっぱりアメリカ映画なんだな。」映画早々に違和感が始まる。

「まず島を見たい。」
「ジープを用意します。」
「いや、健康のために歩きましょう。」

戦時中に健康志向かよっ!健康のために歩くなんて、それから50年も先の思想だぞ。

瑣末なツッコミを入れて、と思われるかもしれないが、映画というのは観ていてスイッチが入る瞬間がある。その逆でスイッチが切れる瞬間もある。この映画は早々にスイッチを切ってくれた。

すると、見えてくるのは思いっきりハリウッド思想。

この映画に登場する「良識派」は、渡米経験があったりオリンピックに出ていたりパン屋だったりと、“アメリカ的民主主義(合理主義)”を体得した人間達である。あのねえ、二宮君のキャラなんて体罰どころかアカ思想ですよ、当時。前線じゃなくてブタ箱行き。

さらに伊原剛志が言うわけですよ。「最善を尽くせ。自分の道を進め。それが正義だ。」みたいなことを。
「Do your best! Go my way! It's justice!」ていう字幕が俺には見えたもん。いや、英語できないから間違ってるけど。
日本人はそんなアメリカ人みたいなこと言わない。仮に言われても鼓舞されない。そんな“個”の論理が理解できるような教育は受けていない。

要するにこの映画、日本人のことなんかちっとも理解していない。日本人役者の個性も誰一人活かせていない。
まあ、ハリウッドは日本市場ではなく世界市場を相手にしているのであって、理解した振りができれば(日本人以外には)それで済むのだが。

これが『ラストサムライ』ならまだ許せるのだ。「サムラ〜イ、カッコイ〜」を押し切るためだけの虚構の世界だから。『キル・ビル』も同様。『パールハーバー』?あれはそれ以前の問題なんでしょ?
ところがこの映画は違う。変にリアルな分始末におえない。現在の描写から入ることで話をリアルに見せようとしているから余計気になる。

そういう日本人から見れば「ツボ外しまくり」な映画だが、良い点を挙げれば最近の日本戦争映画にありがちなベタついた映画にならなかったこと。
しかし、最後の二宮君以外、感情の高ぶりも狂気もなく、正直、クリント・イーストウッドが何をやりたかったのかサッパリ分からない。硫黄島2部作ともそう。
ヒューマニズム?馬鹿言っちゃいけない。クリント・イーストウッドが得意なのは「異常者」だから。好きなのは「生身の人間」「肉体」であって、ヒューマニズムじゃないから。一見ヒューマニズムに思えるのは、彼自身が歳くって“死”が身近になっったことが反映されてるだけだと思うんだけどなあ。

ここんとこ、彼の映画には「何をやりたいのか分からない」的なところがちょっとある。
こんな映画が続くなら、もうイーストウッド監督作は観なくていい、とさえ思った。

余談

この映画を観ながら「岡本喜八は面白かったな。岡本喜八は面白かったな。」とずーっ思い続けていた。
映画が終わってヨメにそう言ったら、同じことを考えていたそうだ。

(以下本家未記載コメント)
このツマラナイ映画の高評価に自分がどうかしてしまったんじゃないかと不安にある。が、信頼するコメテ、水那岐さんとけにろんさんが2点を付けていたことにホッと胸をなでおろす。

日本公開2006年12月9日(2006年 米)

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