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リンダ リンダ リンダ




監督:山下敦弘/CS/★5(90点)
本家goo movie

「結果」より「過程」、「形」より「時間」を愛おしむ、大変「若い」映画。
「どうだった?」香椎由宇演じる「怒ると怖いけど優しい(byソン)」恵が聞く。

「言えなかった。」前田亜季演じる普通の女の子・響子が答える。

このシーンに、この映画の美点が集約されていると思うんです。

夜の学校のシーン。オッサンになった今の私ならこう言うでしょう。

「練習しようよ。時間もったいない。」

前日。今の私ならこう言うでしょう。

「明日に備えて今日は早く解散しよう。」

だが、きっと“あの頃”は違ったはずです。
そんな実利実益ではなく、仲間と過ごす無為な時間を悦楽したに違いありません。

留年したらしい女子学生が言います。「仲間とやんないとつまんないだろ。」

この映画で唯一、学校教育的に正しい道徳的なキーワードは「仲間」でしょう。
彼女達は音楽が最終目標なわけではありません。結果に至る「過程」として、仲間と過ごす「時間」こそが重要なのです。

私も大学生の頃、終電を逃した男どもがダラダラ一晩過ごす話を書いたことがあります。その時「無為に過ごす時間の悦び」を明確に意識していたかどうか覚えていませんが、この映画を観て、あの時自分が感じたことはこれだったのだなと気付かされたのです。

そういった意味で、この映画はスポ根映画というよりも『スタンド・バイ・ミー』の方が近い気がします。そこに妙な郷愁を持ち込まない分、成長過程の高校生らしい「終わらない歌」足り得たのでしょう。

もっとも、当人達は一生懸命で、無為な時間とは思っていないでしょうし、当然郷愁も感じていないでしょう。また、年齢をとりすぎても単なるノスタルジーで終わっていたでしょう。これは、撮影時28歳という山下敦弘監督のちょうどいい若さが成し得た奇跡の一本かもしれません。

若者というと「元気ハツラツオロナミンC!」なイメージを大人は抱きがちですが、実態はダラダラしているもんです。それが描けたのも監督の若さ故でしょう。
いや、あの爆睡っぷりは実に若者らしい(笑)。
恋の行方が、結果よりも告白する勇気という「過程」で足踏みしているところまで、まったく見事な「高校生映画」だと思うのです。

与えられた企画物で、「ブルーハーツ・女子高生・コピーバンドのいずれにも自分が入る隙がなかった」と言う山下監督は、それでもこの映画に自分の舞台を見つけ、こういう言葉で語っています。

「高校時代。根拠のないプライドと、明け方のテンションだけで通り過ぎていった感覚。」

中途半端に企画に振り回されなかったこの監督、若いのに堂に入ったもんです。

2005年7月23日公開(2005年)114分

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