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マッチポイント




監督:ウディ・アレン/恵比寿ガーデンシネマ/★4(71点)本家goo movie公式サイト

ロンドンに拠点を移したウディ・アレンが「いい所なんだけど飯が口に合わないんだよね」と言っている映画。
ここで言う「飯」とは「女性」のこと。
アメリカを去ってもやっぱりセクシーなヤンキー娘が好きなのだ。イギリス女性はうざったいのだ。過去にも外国を舞台にした作品があるが、現地娘と恋したことは一度も無い。
ウディ・アレンほど(男性視点の)女性描写が巧みな作家はいない。
一見、アレンの中では特異な作品にも見えるが、男女間のもつれはいつものアレン節。
違いといえば、主人公がユダヤ人からアイルランド人に変わったくらい。

この映画のテーマは映画の冒頭で語っているので(この手法は最近多い)、表面上のウディ・アレンの主張を探る必要はない。
もう少し裏の部分、あるいはその真意について、少し考えてみたい。

9.11以降に制作した『僕のニューヨークライフ』『さよなら、さよならハリウッド』で、彼はアメリカから去る主人公を描いてきた。
おそらく、お気に入りの場所を中心にロケしたという『僕のニューヨークライフ』がニューヨーク派としての集大成だったのかもしれない。

その『僕のニューヨークライフ』(原題「Anything Else」)を、私はコメディーに見せかけた政治映画と言っているのだが、そこで彼はらしからぬ「自衛のために武装せよ」という暴力肯定ともとれる台詞を吐く。
この時は本心なのか皮肉なのか分かりにくい「ジョーク」なのだが、『マッチポイント』ではもう少しはっきりした物言いに変わる。
本作では「戦争」「犠牲者」という単語が唐突に発せられる。
それは誤った主張、もしくは言い逃れ的な言い方として用いられていることから、「皮肉」の部類に入る逆説的な台詞だろうと推測される。

では、誰に対する何の皮肉なのだろう?
整理するとこういうことになる。

9.11以降、「自衛のために武装する」「戦争に犠牲者は当然」という思想をウディ・アレンは否定する。
この2つの思想は、テロリストの思想ともとれるが、現アメリカ政府の思想とも言える。
そして彼はアメリカを去った。

それは、本作の後味の悪い「勝者」とオーバーラップする。
ニューヨークの悲劇で自身に害が及ばなかったことも、一つの「運」として。

日本公開2006年8月19日(2005年 英)


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