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ALWAYS 三丁目の夕日




監督:山崎貴/飯田橋ギンレイ/★3(41点)本家goo movie公式サイト

制作者にとって「他人事」の昭和の風景

冒頭で飛行機を飛ばしますよね。あれ、飛ばした瞬間、カットを切り替えると思ったんです。

子供視点で空高く飛んでいく飛行機。その向こうに建設途中の東京タワー。「夢」や「希望」を乗せて飛んでいく飛行機。

そういう画面(えづら)が欲しかったんです。
そういった画面こそ昭和33年の象徴だと思うんです。
「でっかいビル建てる」なんていう鈴木オートの台詞じゃなくて、画面で見せること。それが映画だと思うんです。それができなかったらテレビドラマでもいいんです。

この作品、全部台詞処理。

転んで顔上げたら子供の姿が見えた、でいいだろ。どうして画面で見せる前に「淳之介・・・」とか言うかね。
「完成したんだ」とか、どうして言うかね。つーか、東京タワーって10月には出来てたらしいじゃん。お前、あんなでっかいもん、2ヶ月も気付かなかったのかよ(竣工式が12月だったため勘違いしたのだろう)。
吉岡秀隆が淳之介少年を連れ帰ったことを、「本当に連れてったよ」とか、どうしてマギーとヌッ君の「居酒屋カウンタートーク」で説明するかね。
三浦友和の一件もそうだけど、どうして居酒屋のカウンターでいちいち事情説明するかね。それじゃ西岸良平じゃなくて古谷三敏「レモンハート」だろ。

で、冒頭の飛行機に戻りますが、あらあら、一緒にカメラも上がっちゃうんだ。飛行機見下ろしの街の風景なんだ。
あ、そう。この映画のスタンスってこれなんだ。俯瞰の(傍観者としての)昭和なんだ。

そう。この作品に貫かれているのは、傍観者としての「他人事」の昭和。

野良犬の遠吠え一つ聞こえない薄気味悪い街は、この時代にして浮浪者も頭の奇怪しいオッチャンもおらず、出生不明の水商売女(小雪)の噂話をする隣近所もおらず、綺麗なお姉さん(小雪)に淡い恋心を抱く少年もいない。
こうした「昭和の混沌」はおろか「人間の業」まで「ファンタジー」の名目できれいさっぱり濾過した結果、「清貧」だけが残される。と、思うだろ。ところが、こいつらちっとも「貧」じゃないんだな。

最も憤りを感じるのはシュークリームの件(くだり)で、この当時、貰い物のお菓子(しかも洋菓子)をうっかり忘れるなんてなんと裕福な家庭なんだ。庶民だったら寝た子を叩き起こしてでも泣く子を黙らせてでも喰うもんだ。仮に腐らせても喰ったに違いない。家族中が腹をこわしたら昭和の風景たり得たが、これでは都会の金持ちが田舎者を嘲笑したエピソードでしかない。
だいたいここはどこなんだよ。東京タワーがあんな位置に見えるなんて六本木か!ギロッポンか!お前らヒルズ族か!

この作品、ノスタルジー(郷愁)がキーワードとして語られているが、本当にそうだろうか?
私は昭和40年代生まれの田舎者だが、駄菓子屋のある風景にノスタルジーなど感じない。
郷愁を感じるなら、駄菓子屋で買ったマズイ食い物だったりショーモナイ玩具に対してだ。
宝物だと思っていたクダラナイ収集物だったり、ラジオから流れる流行歌だったり、毎日歩いた通学路だったり、好きなあの子の家の近所だったり、自分の家の窓から見えるいつもの風景だったり、郷愁は「手の届く範囲」の経験に基づくもんじゃないのか。
こんな俯瞰の風景で与えられた「箱庭」は皮膚感覚のノスタルジーではない。
私は「箱庭」は否定しない。むしろ肯定派だ。だが、肯定すべき箱庭は、凝縮されたエッセンスが詰まっている場合だ。この箱庭は単なる「状況」にすぎない。

(例えば、捨てられた子供が、預けられた家の窓から建築中の東京タワーを毎日見上げていた、というなら間違いなく泣いていた。ていうか、東京タワーの使い方ってそういうもんだろ?)

この作品、とても及第点をあげられる出来ではなく、はっきり言って「映画」とは呼びたくないとさえ思う。
それでも3点を付けたのは、スクリーンいっぱいに描かれる「建築中の東京タワー」が見事だったから(DVDが発売されたにも関わらずわざわざ名画座で観たかいがあったというもんだ)。
この作品を評価するなら、「かつての街並を再現した」ことではなく「誰も見たことのない(でも見た気になっている)風景を作った」点ではないだろうか。

ただ、VFXは見事だが、うるさい。
高等技術を見せつけるため、合成シーンになると100%カメラが動く。そこは固定の方が美しい画面ちゃうんか?ってシーンでも動く。正直、監督と特撮は別人がやった方がいいと思うがね。
『ジュブナイル』でエールを送った山崎貴だけに残念この上ない。

あ、そうそう。堀北真希は地味だけどいい女優になると思う。なるといいな。

2005年11月5日公開(2005年 東宝配給)


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  • 2007/09/16 5:01 PM
   

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