森田芳光はよく「読後感」ということを口にするが、おそらく市川準は「行間」を重視したのだろう。
それは必ずしも原作そのままの行間を意味するものではない。映画の「行間」。
いや、原作を読んでいないから知らないが。
いずれにせよ、「ストーリー性」ではなく「語り口」で魅せる映画だ。
室内に風が吹く。「リアル」から見れば不自然なシーンだが、そこに映画的瞬間、映画の躍動がある。
(実際には丘の上にオープンセットを組んで撮影したそうだ)
正直、驚愕するほど緻密で繊細な映画だ。
市川準自身、はっきりとメッセージやインパクトを与える映画ではなく「何気ない拍子にふと思い出すような映画」を目指したらしい。正確には覚えていないが、だいたいそんなところだ。今、ふっと思い出した。
そして映画は見事にその意図通りになり、偶然か意図的か、それはそのまま主人公の心情と重なる。
これはひっそりと路傍に咲く一輪の花のような映画。いわば、「珠玉の短編小説」のような映画だ。
2005.01.29 公開(2004年 配給・東京テアトル)
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