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亡国のイージス

監督:阪本順治/新宿ジョイシネマ1/★3(50点)本家gooDB公式サイト

よく見ろ日本映画関係者。これが「普通」だ。
面白いんですよ。普通に面白い映画。
ちなみに原作は未読ですが、いいんです。福井晴敏って人は作家じゃありませんから。本職は、優秀な「映画の読み手」。 シネスケにいたらぶっちぎりナンバー1コメテでしょうよってくらい面白い映画の感想を言う人です。ま、その人が「こんな設定の映画が見たい」ってのが創作の基本なので、どんなに原作で書き込んでいようとそれは全て後付けの説明。要約したらこういうことになるわけです。いや、面白いんですよ。普通に。

どのくらい「普通」かというと、総て予想の範疇、総て予定調和の中で終始する映画だということです。
ヨメは言いました。まず「役者が普通だ」と。

勝地涼なる未知の役者(正確には「永遠の仔」というドラマで子役時代に見ているのだが)を除けば、真田広之はいつもの真田広之だし、佐藤浩市もいつもの佐藤浩市、終わってみれば寺尾聰はいつもの寺尾聰にすぎず、中井貴一だけはと思いきやNHK大河の頼朝役とほぼ一緒、岸部一徳はおなじみの岸部一徳で、原田美枝子は原田美枝子以外の何者でもなく、豊原功補はやっぱり豊原功補だし、谷原章介は昔の谷原章介に戻っちゃったし、平泉成も平泉成、いつもそんな役ばっかりだなという光石研に、久しぶりに見ても真木蔵人だなっていう真木蔵人だし、今のポジションと過去の栄光を足して2で割ったらこんなもんだろうという吉田栄作だし、原田芳雄はいつ何時でも原田芳雄のままだ!
ああ、安藤政信だけはちょっと新鮮だったかな。

この芸達者達には何の役作りも必要ない「普通」の彼ら。だいたいさあ、真田広之と中井貴一がガチでやったらJACが勝つに決まってんじゃん。この二人を逆の役にしたらだいぶ違ったと思うんだよね。冷徹且つ剛碗の悪役に知恵のみで勝負せざるを得ない主人公。JACに挑むふぞろいの林檎たち。その方が盛り上がると思うんだよなあ。

私は「普通」に成り下がった原因を、「編集」「音楽」「絵コンテ」と睨んでいます。異物同士が化学反応を起こすんじゃなくて、ただ単に角が取れて丸くなってしまった感じ。特に編集。阪本節がドンドン削り取られている。
テーマ的にはもっとトンガってていい映画だと思うのです。
だがプロデューサー(かな?)は「賛否両論」を恐れたのでしょう(『KT』がそうだったからね)。制作費を回収するためには「中道」で「分かりやすい」必要があったんですよ、きっと。

阪本順治の特徴である「不親切」な説明不足=観客に行間を読むことを強いるトンガった描写あるいは暗喩は分かりやすく編集され、その結果、非常事態は観客にとって理解出来る手のひらサイズ。だから誰でも「描写が甘い」という感想が持てる。
本来なら観客なんか「何だか分からない」状態に置いてきぼりにすりゃよかったんだよ。そうすりゃ「何だか分からない」けど「何だか凄いことが起きている」ような気になったのに。理解の範疇を超えた、想像を絶する事態に思えたのに。

その一方で、ある映画評論家は言う。「日本映画がみんなこれくらい面白ければいいのに」と。
そうなのだ。
これが、豪華キャスト&多額の制作費を謳い文句にした超大作という“特別扱い”ではなく、日本映画全般の「普通」がこれくらいの面白さならば、日本映画はだいぶ変わると思うのですがね(制作費が普通ってのは無理だろうけど)。
要するに、日本アカデミーなんかでノミネートされたりしないで、「こんなの普通だよ」というレベルに日本映画があって欲しいと思うのですよ。

2005年7月30日公開(2005年 日本ヘラルド、松竹他)


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