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海を飛ぶ夢

監督:アレハンドロ・アメナーバル/日比谷シャンテ/★4(68点)本家gooDB公式サイト

この映画にとって、「感動」なんて言葉は軽すぎやしないか?
「泣ける」「感動作」というウリの様だが、これは考えさせられる映画だ。まともに受けとめたら泣いてる余裕なんかないはずだ。もし自分がそうなったら?逆に看護する立場になったら?事故や病気ばかりではない。「老い」という形で必ず現実のものとなる。

この映画で立派なところは、安易な結論を求めなかったこと。
神父に対して唯一批判的だったものの、全ての登場人物の理屈が納得できるもので、全員が「正しい」こと。

ハリウッドにありがちな「善か悪か」の二極論なんてものは現実社会ではほぼ皆無に近い。
「映画は夢を与えてくれるもの」という思想からは間違っているのかもしれないが、少なくともこの手の話を感動作的ファンタジーに仕上げなかったことは称賛に値する。

じゃあ、映画じゃないのかというと、とんでもなく映画的である。写真を見せるシーンなんて極めて映画的興奮に満ちあふれていてドキドキしたぞ。
少なくとも「エンターテイメント=楽しい」「泣ける=感動」という固定観念ではなく、「知的エンターテイメント」(それは謎解きという意味ではない)という成熟した思考をアメナバールは持っているようだ。

ただ、まあ、若いなあと思う点はある。

「生きるのは義務じゃない。」「死ぬ権利だってあるはずだ。」
当然決して声高に主張はしないし、明確に主張もしていないが、おそらくアメナバールも同意見なのだろう。
私も若い頃同じ思想を持っていた。いや、今でも捨てたわけではない。
どれだけ悲惨な状況で、どれだけ頑張っても泥沼から這い上がれないか、その状況をどこまで理解して「頑張れ」だの「生きていればいいことがある」なんてことが言えるのか。
私は他人に気安く「頑張れ」なんてことを言いたくない。自分より頑張ってるであろう人にどのツラ下げてそんなことが言えるだろう。
「明日兄さんが死んだらどうなるんだ。」そんな言葉を聞かされて「それでも生きていればいいことが」なんてどうして言えるだろう。

だが、年齢を経て一つ変わったことがある。上記の思想は半ば若気の至りも混じっている気がする。
「頑張れ」だの「生きていればいいことがある」などと訳知り顔の大人ぶった(偽善的な)言葉は今でも吐きたくないが、「逃げるな」とは言いたい。
人生は闘争と苦渋の選択の繰り返しだ。逃げた先にパラダイスは待っていない。パラダイスなんてどこにも待っていない。自分で選び、掴み取るしかない。だから「逃げ」の結論が「死」なのだったら、私は反対する。

私がこの作品に好意的なのは、(多少若気の至りが混じっていても)「生きる」ことと「生かされる」ことを“選択”する人間を真正面から見つめているからだ。

『オープン・ユア・アイズ』『アザーズ』と、そのトリッキーな設定と比べて「アメナバールらしくない」と言われているようだが、生と死、現実と幻想、それを真摯に真正面から描く姿勢は一貫して変わっていない。アメナバールは大した作家だ。

2005年4月16日 日本公開(2004年 スペイン=仏)


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