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山猫【イタリア語・完全復元版】

監督:ルキノ・ヴィスコンティ/新宿テアトルタイムズスクエア/再鑑賞/★4(65点)本家gooDB

例えば幕末を貴族視点で描いたら面白くなるのだろうか?
『海猫』と間違えたわけではない。

大学生の頃、大幅にカットされた国際版の日本語吹き替えを写りの悪いテレビで観て以来。今回スクリーンでイタリア語・完全復元版を観られたことに感謝。

英語国際版には3点しか付けないが、イタリア語完全復元版には4点を献上したい。「映像の世界遺産とでも言うべき作品を国を挙げての文化事業として復元した」という触れ込みだが、まさしく映像の世界遺産だと思う。スコセッシがこんなことやりたくて『エイジ・オブ・イノセンス』とか撮ってるけど、これはもうケタ違い。室温すら感じさせるこんなリアルな舞踏会は見たことない。そうか、女性の扇子はただのファッションじゃなかったんだ。

通常映画は、特にハリウッドはそうですが、ヒューマンドラマだ人間ドラマだ言っても、その中心にあるのは実は「事件」。つまり「事件」こそがストーリーの中心で、観客の多くにとっても「事件」の面白さだけが映画の面白さを左右する要因だったりするのです。

ところがこの映画はほとんど「事件」が起こらない。いや、事件は起こっているんだけど、映画のほとんどを貫く視点である主人公は、「事件」の外にいる“傍観者”にすぎない。主人公視点から離れるのは、ほぼ唯一、“神”視点の大パノラマ戦闘シーン。実は「事件」はこの段階で終わっている。物語の前半3分の1くらいで「事件」は終わっちゃってるのだ。

日本なら幕末に置き換えるとして、主人公は徳川でも薩長でも新撰組でもなく朝廷にいる一貴族。それも窓際。言わば歴史の表舞台には登場しない(けど聡明な)人。
シチリアでは山猫のようですが、さしずめ日本なら「飼い犬になることを拒んだ老いた一匹狼」の話。毎度おなじみ「若者はいいなあ」視点ですけど。
そんな移りゆく激動の時代の中、渦中に身を置かないインテリ知識人は何を考えていたのか?という話だとも解釈できる。

それってどうなの?3時間観て面白い話なの?

これはヴィスコンティが観客に叩きつけた挑戦だ。意図的に「事件」をストーリーの外へ追い出し、風光明媚、豪華絢爛な映像のオブラートで包んだ直接描写から、間接描写を読み取ることを観客に強いるのだ。これは大幅にカットされた国際版では無理な話だ。そして我々観客は、監督の挑戦に答えようと脳味噌をフル回転させた結果、映画が終わる頃には舞踏会の参加者同様グッタリ疲れ果てて帰路につく、そんな映画だ(<本当か?)

リバイバル公開2004年10月23日(1963年伊)3時間6分


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