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不連続殺人事件

監督:曾根中生/CS録画/★3(55点)本家gooDB

これは坂口安吾の『シベ超』だ(映画より原作の話だな)
当時日本一のミステリーファンだった坂口安吾が、読んでいるだけでは飽き足らず自分で書いた、という点に於いてマイク水野の『シベリア超特急』と同じ。
相違点といえば才能・・・ということではなく、高尚であると認知されている映画の世界へ挑戦した『シベ超』に対し、当時低俗と蔑視されていた探偵小説(「推理小説」という言葉は当時なかったはず)に純文学作家が挑戦した『フレ殺』。その結果も、第二回日本推理作家協会賞を受賞(当時は探偵作家クラブ賞。初代会長は江戸川乱歩。ちなみに第一回の受賞は横溝正史の『本陣殺人事件』)の『フレ殺』に対し、『シベ超』は“みうらじゅん大賞”とだいぶ差がある。
それでもなお、私は『シベ超』と同じレベルの作品だと思っている。

そもそも協会賞を受賞した裏には戦後間もなく(連載開始は昭和22年、受賞は24年)という背景がある。

戦前の探偵小説が低俗と蔑視されていたことは前述したが、それは単に「探偵小説=江戸川乱歩の作風」と見なされていたからである。エロ・グロ、くだらん、こんな本人間をダメにする、と見なされていたのだろう。
ところが戦後、当の江戸川乱歩自身が「本格推理小説」を提唱し始める。欧米に遅れること約20年。クイーンだ!クリスティーだ!ヴァンダインだ!と作家達も言い始め、本格推理小説が中心となっていく(そして乱歩自身は子ども向け中心に転向していく)。実際、第一回協会賞の『本陣殺人事件』も横溝イメージでありながら見取り図などが書き込まれた本格推理の様相を呈している。
そして坂口安吾は、連載に先立ち、エラリー・クイーンをやったのだ。

「犯人当てたら懸賞出します」

そう。これはデ・パルマが「ヒッチコックやりてえ」ってのと同じ次元なのだ。
そして坂口安吾は、読者であった自分が読みたい推理小説=謎解きの面白さ=「作家と読者の知恵比べ」に主眼を置いたのだ。それが原稿料を掛けた犯人探し。
だからもう洋館だ複雑な人間関係だ毒薬だと盛り沢山。人間描写や心の機微なんざどうだっていい。唯一「心理の足音」ってのだけが純文学者の面目躍如。つまり謎解きの面白さのみを追求した(そんなに風呂敷広げてそんな動機かいッ!)原作なのだ。

そんなドラマに向かない題材を、映画という「謎解きに向かない」媒体を使って作品化しようってんだからイカレテイル。面子は清順抜きの変則【具流八郎】。イカレテイル最右翼。清順がホされていた期間に様々な企画を考えたそうだが、これもその一つだったんじゃないかと私は睨んでいる。たぶん台詞がほぼ原作通りなのも意図的な実験なんだと思う。いずれにせよただの推測だが。

長くなってしまったが、最後に映画としてはどうか?という問題に一言触れておきたい。

事件解決担当が【小坂一也】というキャスティングの時点で力弱いことこの上ない。(でもこの映画、けっこう嫌いじゃない)

1977年3月15日公開(1977年日)140分


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