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誰も知らない

監督:是枝裕和/新宿タイムズスクエア/★3(48点)本家gooDB公式サイト

毎度毎度こんな話作って楽しいのかねえ・・・
非常に巧い監督で特に画面構成など目を見張るものがあるのも毎度のこと。ストーリー的にも演出的にも誉めるべき点こそあれ非がないのも毎度のこと。でも観ていて楽しくないのも毎度のこと。相も変わらぬ後ろ向きな姿勢。人生を日向と日陰に分けるなら明らかに“日陰”が好きな人。“明るい未来”よりも“暗い過去”が好きな人。

是枝監督は「怒りから優しさに代わった」といったような事を言っているらしいが、子供達に対する「優しい視点」があるとは私には思えない。悲観主義者の人生観を見せつけられているような気がする。
この映画で描かれているのは「生きる」ことではなく「人生」なのではないか。人生なんてその大半が辛く苦しいもので、僅かな希望(夢)を胸に、時折ちょっと楽しいことがあって、でもそれ以上の不幸がすぐに襲ってきて・・・そういう映画のような気がする。

もしこの映画に「優しい視点」があるとすれば母親に対する描写だ。

彼女は決してその明るいキャラクターで許されているのではない。責務は果たさなかったものの母親であろうとしたことだ。その象徴的な行為の一つが「引っ越しそば」。

子供を旅行鞄に押し込めるという信じ難いセンスと引っ越しそばを喰う伝統的な美意識のアンバランス加減に当初面食らったのだが、そのアンバランスな感覚こそこの母親のキャラクターなのだ(そういう辺りも巧い監督だと思う)。
クリスマスにはケーキを、正月にはお年玉を、長男が苦労して捻出する年中行事。UFOはいないけどサンタクロースはいると信じている子供達。そんなこと誰に教わった?母親しかいない。
学校に通わせはしなかったが、ある面では正しい教育をしていた母親。そのアンバランス。良き母親であろうとする事と女である事。そのアンバランス。

そう考えると母親の人生観の方がとても広がりがある。長男にはドリルや辞書を買い与え勉強させる。今まで学の無い男達と付き合ってきたからだ。長女にはオモチャのピアノを買い与える。自分が出来なかったからだ。彼女は子供達に自分の叶えられなかった人生を託す。だが本当は自分自身がやり直したかったのだ。

じゃあ子供達にとって母親は何だろう?この映画で描かれているのが「人生」だという私の仮説に則れば、それは「運命」なのだ。あまりにも不条理な運命。
そんな運命を背負った子供達の背中写して終わられてもねえ・・・。
それ以前に「ドロップ」が「アポロ」になった『火垂るの墓』でいいのかねえ・・・。

2004年8月7日公開(2004年日)143分


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