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レディ・キラーズ

監督:ジョエル&イーサン・コーエン/新宿ジョシシネマ/★3(55点)本家gooDB公式サイト

北部の『ファーゴ』に呼応する南部の物語。私には難しすぎる内容。
難しいこと考えないで、バカ映画と割り切って楽しめばいいんだよ!と言いたくても言えない何かがコーエン兄弟作品にはある。
それが何かは上手く説明できないが、その理由は何となく分かる。きっと彼らは「バカ話」が好きな「インテリ」だからなのだろう。

ここで言うバカ話を下ネタに置き換えるとこういうことになる。

彼らの描く笑いは、
「ウンコ!ウンコ!」「ギャハハハ!」という子供っぽいレベルではなく、
「あそこに落ちているのはどうやらウンコらしい。匂いを嗅いでみた。ウンコのようだ。舐めてみた。やっぱりウンコだった」という次元なのである。何?例えが分かりにくい?うん、俺もそう思う。

初期の頃は「バカ」が勝っていたため素直に笑えることが多かったが、最近は「インテリ」が全面に出てきて、なかなか素直な爆笑にならないことが多い。皮肉混じりに「ニヤリ」って笑いが多いようだ。
私はそれを否定しないし、むしろ「ウンコ!ウンコ!」よりも好きな世界ではある。

しかし・・・と文章を続けねばならない展開なのだが、もう一つ前提。

彼らの笑い=ブラック・ジョークの根底は「人間の不条理」と「社会の不条理」にあると思うのだ。
例えば『ファーゴ』が典型で、「人間の不条理」はある程度普遍的なものなので、その舞台設定がどうであれ楽しめる。
ところが「社会の不条理」はそうはいかない。その社会の前提条件を知らないと楽しめない局面が出てくる。前作『ディボース・ショウ』がそうで、アメリカの訴訟社会というものを皮膚間隔で知らない我々には、何に対して毒を吐いているのだか今一つピンと来ない(ただあの映画は本国アメリカでも不評だったらしいので、そればかりが原因ではないようだが)。

そしてこの映画もまた、「人間の不条理」の大前提に「社会の不条理」が置かれている。
事件が何も起こらない平和な南部の街でも、すぐそこの河に行けばギャンブル場とゴミ捨て場があるんだぜ。どうよ、どうよ!という面白がり方というか毒の吐き方がね、「舐めたらウンコだった」的な高度な(というと語弊があるが)笑いであることは分かっても、アメリカ南部を全く知らない私にはイマイチ分かったような分からないような感覚がついてまわるのですよ。黒人と白人の関係とかね。
「黒人だからクビになった!」「清掃人は全員黒人だ!」って、黒人=清掃人って凄い毒だったりするわけですよ。

『オー・ブラザー!』で「オデュッセイア」をベースにした(ということ自体本当か嘘か分からんが)くらいですから、こういったこと以外にもいろんな「仕掛け」があるんでしょうよ、きっと。
例えば「ポー」を引き合いに、「怖い話を書く怪奇小説家」という庶民の認識と「美しい詩を書く詩人」というインテリの認識を対比させるわけです。
そしてこれが、「一人1セント(だったかな?)しか損していない」という知識層の認識(詭弁)と「でも犯罪は犯罪」という庶民の認識(常識)との対比になっていくわけです。
さらに言えば、この教授を「政治家」に見立ててみると、甘い言葉(ポーの詩を暗唱する)で庶民に囁き、裏で悪いことをしつつ、それが発覚すると詭弁を弄する・・・といった具合に、毒吐きまくりの描写だったりするわけです。

つまり何が言いたいかというと、コーエン兄弟の映画は、そのブラック・ジョーク(=毒)の「ネタ」としてある程度の知識を要求している気がするのです(私は単純にそれをもってインテリと呼んでいるにすぎない)。その知識は文学的なものであったり、社会的なものであったり様々で、本当は以前からそうだったのだが、昔は「バカ」が全面でネタの前提も「普遍的」な物が多かったので意識しなかっただけなのではないか。最近はやたら「コア」な知識を要求しているのではないか。という気がするのです。
彼らの興味の対象がそうなったのか、あるいは「ネタ」に詰まっているのかは分かりませんが。

そういった中で、今回は私の知識ではほとんどついていけなかった、というのが正直な感想なのであります。

余談

コーエン兄弟はもちろん、タランティーノやティム・バートンについて最近思うのだが、
「好き勝手やってた若手」が知らぬ間に「中堅」に押し上げられているような気がする。
例えるなら、若手の台頭に、お笑い番組の司会に押し上げられたくりいむしちゅーみたいな感じ。
くりいむしちゅーはともかく、この監督達、中堅に押し上げられて良かったのかな、これから巨匠になっていけるのかな、そもそもそんな風になっていくのを我々は望んでいたのかな、なんてことをちょっと考えたりする今日この頃。ウンコ!ウンコ!

日本公開2004年5月22日(2004年米)


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