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井上陽水「空想ハイウェイ」

TV特番/NHKBS2

何のための何の企画なんだか分からないが、NHKには陽水好きがいるようだ
私の憧れのオジサン井上陽水。こんなオジサンになりた・・・くはないが、上司にもいてほしくはないが、親戚のオジサンにいてほしいくらい素敵な人だ。

どれくらい素敵かというと、例えばこの番組内で「何を信じているか?」という質問に対する答え。

「信仰関係の方はもちろん神ですと答えるのでしょうし、あるいは両親、心から信頼できる友人なんて答えもあるでしょう。」
「でも、親友のA君とB君を心から信じています、なんていうのが何となくツマラナイのではないかと思うタチでして」
「人として生まれてきたからには、心から信じるという瞬間も味わいたいですし、逆に信じていたのにコッピドク裏切られたなんて瞬間も味わいたいと思ったりしまして」
「まあ、そんなことを信じたり信じなかったりしながら生きてますけど」

ね?素敵なくらい質問の答えになってないでしょ?

で、まあ、この番組、陽水が好きなものや(ローレン・バコールや『社長漫遊記』が好きなのだそうだ)考えていること(それもくだらないこと)を語ったりしながら、その合間に曲を歌うという1時間30分。

この番組で意外な発見があった。
ELTの持田香織とデュエットしたのだが(ビートルズの「Every Little Thing」)、持田香織は歌が巧いことを初めて知った。陽水の「いつのまにか少女は」も歌ったのだが、実にいい感じだ。歌の巧い下手は他人の歌を歌うと如実に現れるようだ。
ちなみに陽水が歌った「ロシアより愛をこめて」は絶品だった。

また、この番組内で陽水が「ビルの最上階」という曲を歌ったのは貴重だった。
この曲は、「九段」という陽水の中で最も売れなかったアルバムに収録されている曲で、ライブ等でも歌ったという話は聞いたことがない。第一長い。それに変な歌詞だ。だがモノスゴイ曲で私は大好きなのだ。

「ビルの最上階」は15階建てのビルの歌である。
14階は“テレビ局のフロア”で、ディレクターが“クイズ番組の答えを横流し”しているらしい。
13階は“法律事務所”。離婚問題で夫婦の“憎しみの言葉”が“溢れ出”ているらしい。“焚きつけられて燃え盛る被害者と卑怯者呼ばわりされて怒る加害者”もいるらしい。
12階は“子供達の”“ペットショップ”で、さみしさに耐えかねた“御婦人達”や“老人”も来るらしい。“アビシニアン、ダルメシアン、スコティッシュフォールド、アメリカンショートヘアも”“適正な価格で”売られているらしい。
11階は“貿易会社の事務所”なのだそうだ。“コンピュータと為替レートに揺らぐ”“決断の遅いベテランの味覚と舌先”が勝負所らしい。
10階は“思いがけず”“客の入らない映画館”。“週末だけは孤独なカップル達がチラホラ”来るらしい。
7〜9階は“ラブホテル”。“数限りなくシーツとコンドームが汚され”る。
6階は“アフリカの聞き覚えのない国”の“大使館”。“大使館で働く4人のうちの1人は観光ビザのまま出前のランチを頼んでいる”らしい。
5、4階は“安全を売る”“警備保障の会社”で、“連日連夜、警報ランプが赤く光り鳴り続け”ているらしい。
1〜3階は3種類の“コンビニエンスストア”。“便利さの影から防犯カメラが私達を1人残らず映し撮っている”らしい。
15階建てかと思ったら地下3階があって、“何と”“ギャング達の”“ギャンブル場”。“郵便配達も税務署もなく”“国際交流はいつになく激し”いらしい。

なんなんだこのビルは!?あり得ねえ。
などとツッコミつつ、このビルは、社会の、世界の、人生の縮図であることは容易に想像がつく。
容易に想像させた上で、陽水はオチに“最上階”を持ってくる。

“15階建てのビルの最上階は今もなおミステリー
誰が住んでいるのか何をしているのか知る人はいない
楽観的に見ても 悲観的にも
不可解な空白が青空に浮かんだまま”
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