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ディボース・ショウ

監督:ジョエル・コーエン/新宿武蔵野館3/★4(70点)公式サイト

コーエン兄弟版『お熱いのがお好き』又は『赤ちゃん教育』。ジョージ・クルーニーの代表作とよんでもいい。ていうか、よぶべきだ。
コーエン兄弟初の他人の持ち込み企画はアメリカ本国で不入り。日本でも新宿・渋谷は2〜3週間で打ち切りの憂き目に。何がいけないんだ?素直に面白いけどな。

ハワードって役名(ビリー・ボブ・ソーントン!)が出てきた時、漫然とハワード・ホークスの名を思い出していた。スクリューボールコメディーの大傑作の呼び声高い『赤ちゃん教育』の監督だ(恥ずかしながら未見)。
マリリンって役名(キャサリン・ゼタ・ジョーンズ)で漫然と思い出すのは当然マリリン・モンロー。彼女の作品では何か一番お好き?私は『お熱いのがお好き』がお好き。これまた映画史上に残る傑作コメディー。

この映画でコーエン兄弟が目指したのは、古き良きアメリカンコメディーだったのだろう。

事実、観ている時は漫然と「『ピンクパンサー』みたいだな」(目つぶしスプレーのクダリとかね)と思っていたら、本当にブレイク・エドワーズを参考にしたらしい。参考にする相手を間違っている気がしないでもないが。

ワインを注文するクダリを初めとする丁々発止のやりとり(残念ながら日本語字幕はだいぶはしょっている感じがする)、ほとんど全てが間接表現の台詞回し、息を呑むような切り返しの応酬。
法廷シーンなんかもう最高。ナントカ男爵とかいう証人を呼ぶ時の期待感の煽り方と登場感。そして出てきた人物とのギャップ。終始ケラケラ笑いながら観ていた。

そうかと思えば、ホテル廊下でのやりとり、カメラ切り返し大会。人物の背後には遠く向こうまで無人の長い廊下。相手の言葉や表情といった表面的なものじゃなく裏側の真意を読み取ろうとする二人。でもその背後はあたかも無人の長い廊下の如く何も見えない。そしてこの圧倒的な奥行きのシーンを、この映画唯一の(ような気がする)エレベータ内二人横並びという平面的な構図のシーンでサンドイッチすることにより、さらに際立たせる。奥行き−平面ばかりではない。このシーンは、全身−アップという極端な構図のとり方もしていて、それがまた二人のやりとりに緊張感を与えている。巧いなあ。ほんと巧いなあ。

私は元々ジョージ・クルーニーを大した役者だと思っていない。
確かに現存する唯一「ニヤケ顔の似合う俳優」かもしれないが、映画史上「何を考えているのか分からない怪しいニヤケ顔俳優」の称号は、絶対的にケイリー・グラントのものだ。彼の絶対的な「ニヤケ顔」に比べたら、ジョージなんざただの安っぽい役者にしか見えない。
ところが、彼の安っぽさがこの映画にマッチしたのだ。この映画のこの役はジョージ・クルーニーしか考えられない。いや、むしろ、彼はこの役をやるために生まれてきたと言ったら過言か(<過言だ)。そういや、『赤ちゃん教育』はケイリー・グラントだったな。

キャサリン・ゼタ・ジョーンズは3年で消える女優と公言していたのだが、撤回せざるを得なくなった。この彼女はいいぞ。ちょっと惚れたぞ。騙されてみたいぞ。
しかしまあ、自身訴訟好きで、マイケル・ダグラスと本当に婚前契約を結んだ彼女を抜擢する辺りがコーエン兄弟の「毒」が見え隠れするというか。
そういや、ワイルダー先生もヒッチ先生も、この手の「毒」が大好きで、これまたコメディーの名手の特徴なのかしらんと漫然と思ってみたりして。

日本公開2004年4月10日(2003年米)

1時間42分

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