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阿修羅のごとく

監督:森田芳光/新宿グランドオデオン/★4(68点)gooDB公式サイト

リアルな昭和を描いたことのない森田芳光が描く小宇宙的家族劇。
これだけ好きなキャストとスタッフが揃って、かつ、元八十助に女癖の悪い役をやらせるヒッチ的悪戯や二大怪女優対決といった面白仕掛け満載でも、どうしても超えられない壁。

(長いコメントの上にさらに長い赤レビュー↓)
小説やマンガなどオリジナル(今回はテレビドラマ)と映画は別物であり、その比較は評価の対象ではない。←私にとってこれが大前提であることから話が始まる。

なにしろ私好みの役者陣だ。
深津絵里(『ハル』)はとてもいい女優だと思っているし、なんだかんだ言っても女優をやるために生まれたとしか思えない大竹しのぶ(『黒い家』)、役者としてはどうかとも思うが美人というだけで好きな黒木瞳(『失楽園』)。ついでに美人というだけで好きな木村佳乃(『失楽園』『模倣犯』)に紺野美沙子。見ているだけで楽しい桃井かおり。最近演技力を再認識した深田恭子(『陰陽師II』<そりゃ滝田だ)、実は好きな仲代達矢に小林薫(『それから』『そろばんずく』『悲しい色やねん』)。そしてお歳を召されても美しい八千草薫。あー、もうお腹いっぱい。

加えて脚本家筒井ともみのファンだし、あまり知られていないだろうが実は森田芳光のファンなのだ(なに!?知ってる!?)。

それより何より、私は向田邦子の信者だ。
原作(脚本)「阿修羅のごとく」は愛読書でありバイブルである。私の脚本の手本は「阿修羅のごとく」であり目指す脚本は「阿修羅のごとく」なのだ。
私の血となり肉となっているのはヒッチコックであったりワイルダーであったり市川崑であったり岡本喜八であったりするのだが、実は骨は向田邦子なのだ。血肉は映画が好きになってからの体質なのだが、骨に対しては小学生の時に保健室のラジオで偶然流れた訃報のニュースを聞いて以来、「トラウマ」にも似た呪縛と運命を感じ続けている。
(余談だが向田邦子は清少納言で橋田寿賀子は紫式部なのだと私は例えている。そして私は紫式部が嫌いである)
そしてドラマ「阿修羅のごとく」は「木更津キャッツアイ」と並ぶ、私の「超A級殿堂入りドラマ」なのである。

だから冷静に観ることなんかできない。

どれだけ森田芳光が器用に演出しようが(少し前の時代を舞台とする時、決まって当時の流行歌や風俗を誇張したりするものだが、森田芳光は決してそんな不器用なことはしない)、オリジナルの次女役八千草薫を配し長女役だった加藤治子をナレーションに起用するなどの「敬意」を評しようが、どれだけ筒井ともみがオリジナルを損なわずにコンパクトにまとめようが、そこにあまりにもパーフェクトな「作品」が現存する以上(最近の再放送を録画してDVD化しました)ある種呪縛のように大きな壁として立ちはだかってしまう。

どんなに深津絵里が見事に演じても石田あゆみのギスギスした感じはないのだ。深田恭子がどんなにかわいくても風吹ジュンの男好きする小悪魔的魅力は出ないのだ。だから石田あゆみと風吹ジュンのソリが合わないことに説得力があるのであって、だからゆすられた時の足の裏のへのへのもへじで泣かされるんであって、深津絵里と深田恭子じゃただの美人姉妹じゃないかっ!クソッ!隣に住んでてほしいぞ!(←何を言ってるんだか訳がわからない)

まあ、泣いたよ。映画館で号泣したよ。すみからすみまで、一言一句覚えていても泣いたよ。それだけ原作の力もあるし、森田芳光もちゃんとツボを押さえた演出をするよ。例えばそうさなあ、冒頭のイラストを用いた四姉妹紹介。喜怒哀楽で阿修羅を連想させつつ、電話の会話だけでオリジナルの数シーンを凝縮して状況説明する上手さ。玄関に脱いだ靴の配置だけで四姉妹の性格を語り尽くす見事さ。上手いよ、ホントに、あんたは上手いよ。だけど、だけど・・・。

やっぱり超えられない壁はあるのだ。

2003年11月8日公開(2003年日)


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