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グッドバイ〜嘘からはじまる人生喜劇〜



新しいモテ男像と小劇場的歌舞伎様式美。


監督:成島出/新宿ピカデリー/★4(80点)本家公式サイト
太宰治未完の遺作を有頂天のケラが戯曲化したものを奥寺さんが脚本化しているので、太宰からはだいぶ遠くなっているのかもしれませんが、しかしこの映画の主人公はやはり太宰治を投影した人物だと考えるのが正しいでしょう。それを前提として話を進めます。

太宰治像を振り返ってみると、最近では蜷川実花『人間失格 太宰治と3人の女たち』(2019)の小栗旬とか、荒戸源次郎『人間失格』(2010)の生田斗真とか、所謂「イイ男」がすぐに思い浮かぶわけです。そういや河村隆一が演じた『ピカレスク 人間失格』(2002)なんてのもあったな。みんな「人間失格」好きね。ちなみに私は中学生の頃からの愛読書なので、この映画3本は観ていません。たぶん今後も観ません。
「人間失格」以外でも、根岸吉太郎『ヴィヨンの妻』(2009)は浅野忠信が、たしか「太宰治物語」とかいうテレビドラマでは豊川悦司が、NHK朝ドラ「純情きらり」ではおそらく太宰であろう役を西島秀俊が演じていた記憶があります。

さてお立合い。ずらり並んだ水も滴るイイ男、そりゃモテ男の役だから当然なんですが、こに大泉洋が加わるわけです。これをどう思う?世の男性諸氏よ。

私がこの映画を観たのは、公開翌日の土曜の午後。場所は新宿。「どうせ中高年しか見向きしないだろう」と侮った私の予想を大きく裏切り女だらけの超満員。仕舞にゃ大泉洋の一挙手一投足にワーキャー言い出す始末。うちのヨメに言わせれば『黒崎くんの言いなりになんてならない』より酷い状況。みんな大泉くんの言いなりになっていた。忘れてた!『探偵はBARにいる』で同じ経験をしたはずだった。。。

おそらく、「イイ男」と「モテ男」は別なのです。
いや別に、大泉洋がイイ男じゃないと言ってるわけではありません。いや、言ってるな。
えーっとね、比べれば絶世の美男子というほどでもない、ということで納得してください。
でも、大泉洋は「モテ男」なのです。これは間違いない。
もはや「モテ男=イイ男」という時代ではないのです。
むしろ「なんであんな男がいいのかね?」的太宰像としては最も理想的な役者かもしれません。

この映画、台詞回しが所々舞台演劇っぽい気がします。
最初は有頂天のケラ(<しつこい)の戯曲を翻案したせいかと思って観ていたのですが、途中で成島出の「仕掛け」ではないか?と思い始めました。
愛しの“たま”こと緒川たまき嬢辺りで気付き始めたのですが、全体的に芝居がかってるんですよ。小池栄子先生の変な声とか木村多江の津軽弁とか。
簡単に言うと、大泉洋は自然体で、周囲の女たちが不自然に芝居がかっているという構図に見えるのです。

(愛しのたまとか小池栄子先生とか頭のオカシイことを言い出しましたが、実は『ナチュラル・ウーマン』を観に行くほど緒川たまきファンだったんだよね、今はケラの奥さんだけどとか、小池栄子先生は棟方志功の版画絵みたいで大好きなんだとか、加えて橋本愛ちゃんだ木村多江だ水川あさみだと「女性の素晴らしい所以外目に入らない」ので、語り始めたらキリがないから止めときます)

小劇場的な台詞回しを用いながら、女優陣はカッチリとした歌舞伎のような「型」を演じる。そんな女性陣に振り回される「モテ男」大泉洋の(いつもの)「困り芸」。
それはもう、ファンが望む大泉洋の姿であり、成島出が仕掛けた喜劇の「様式美」なのでしょう。

異様な(というほどでもないけど)劇場の雰囲気に呑まれたせいもあるかもしれませんが、かなり喜劇を満喫したんですよ。笑った笑った。



2020年2月14日公開(2019年/日)

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