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カツベン!



結果、『雄呂血』が一番面白い。それも必然。いや、それも計算のうち。

監督:周防正行/ユナイテッド・シネマとしまえん/★4(71点)本家公式サイト

劇中、永瀬正敏が言うんです。
「余計な説明はいらない」「観れば分かる」「写真(映画)がなければ活弁は成立しない」

ところが、獄中のカツベンはまるで講談。写真抜きで活弁を成立させるのです。
まるでこのシーンのために全体が構成されていたかのようです。

一方、エンディングは弁士のいない『雄呂血』が流れます。
「日本には真のサイレントがなかった」という稲垣浩の言葉を挟んで、真のサイレントを魅せるのです。
劇中劇のサイレント映画は全て新撮だそうですが(草刈民代や上白石萌音のカメオ出演も楽しい)、『雄呂血』だけは正真正銘の本物。いやもう『雄呂血』は何度観ても滅法面白い。

実は周防正行という人は、村上春樹、尾崎世界観と並ぶ、我がスワローズ信者の代表格なんですね。基本、我がスワローズファンはインテリしかいない。
そんな周防監督は「好きすぎて、野球は映画の題材にしない」と公言しています。
そんな周防監督が「映画」を題材にしたんです。
じゃあ何かい?アンタは野球ほど映画は好きじゃないのかい?と。

ところがこの映画は、『ヒューゴの不思議な発明』的な『映画に愛を込めて』ではなかったのです。
僧侶修行(『ファンシイダンス』)、大学相撲部(『シコふんじゃった。』)と同じパターンで、「弁士」という未知の世界を描いた作品だったのです。
プロデュース作『がんばっていきまっしょい』(高校ボート部)も含め、「未知の世界」における「若者の成長譚」という原点回帰にすら思えます。

(実はその後も決して手慣れた世界を描くことはなく、常に「未知の世界」を徹底的に取材して丹念に描きつつエンターテインメントに昇華させる姿勢に変わりはないのです。ただ、『Shall we ダンス?』以降は、「若者の成長譚」よりも「自身の世代の物語」が多くなっている気がします。)

前作『舞妓はレディ』辺りから、「消えゆく文化(日本文化)」を裏テーマとして、現代的エンタテインメントに織り込もうという意図が見えます。
それが「古き良き時代を描いたノスタルジー映画」と捉えられてしまう要因でしょうが、この映画、それだけじゃないんですよ。とにかく予告が下手。



2019年12月13日公開(2019年 東映)

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