茨城の場末のスナックで伊藤沙莉が「サマーナイトタウン」を歌います。
元モー娘。ファンでこの曲をよく歌っていた私が解説しましょう。
どんな笑顔見せても 心の中が読まれそう
大キライ 大キライ 大キライ 大スキ
この映画の夏帆ちゃんの感情は、この歌詞に集約されるのです。
私自身が「都会で暮らす田舎者」なので、監督の分身(であろう)主人公に共感しちゃうというか、もう、痛くて痛くて。
だからもう、整理して、論理立てて書けないんです。
目の当たりにする年老いた母(この映画の南果歩は出色)や家族。さえない観光地、ヤンママ達。田舎町。大キライ。
死期の近い祖母。無慈悲に昆虫を殺していた子供の頃。猫の想い出。不倫相手の奥さんに宿った新しい命。
伊藤沙莉のように地元で力強く生き延びる覚悟もないまま、都会で「上手く生きている」つもりの自分。強がって生きている自分。そういうのダサい。
「作り笑顔」とスナックのママに指摘される幻想。どんな笑顔見せても、心の中が読まれそう。
夜明けだか夕刻だか分からないブルーアワー。
映画の最後は、田舎から走り去る左ハンドルのフィアット・パンダ。
映画の冒頭もブルーアワー。見えない友達と会話し、「オバケなんてないさ」を歌いながら走る女の子。
その時と同じ自分が、フィアット・パンダの助手席(?)で泣いている。
自分でも何故泣いているのか分からない。本当は分かっている。本当になりたかった自分は、助手席の自分なのか運転席の自分なのか。大キライ大キライ。ブルーアワーにぶっ飛ばす。
おそらく監督の分身というか全身全霊自己投影した主人公なのでしょう。
都会で「上手く生きているつもり」の同じ身の私は、なんかこう、ずっと居たたまれない感情を抱えて観ていました。テレビに的外れなツッコミを入れる母親とか、観てて本当に嫌になる。
だからかもしれません。スカイツリーが見えてホッとしたんです。
2019年10月11日公開(2019年/日本)
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