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太陽の王子 ホルスの大冒険



『天気の子』大ヒットの最中に『太陽の王子』を観る(<さして意味はない)。めっちゃ面白かった。


監督:高畑勲/ユジク阿佐ヶ谷/★4(85点)本家
私は高畑勲が嫌いです。あれ?『かぐや姫の物語』でも書いてるな。
なので死んだからといって初監督作を観てみようという気もなかったんですが、ヨメが見ているNHK朝の連ドラがすっかり「高畑勲物語」の体になり、いやNHKは一切実話だなんて言ってないんですが、高畑勲(と思われる人物)が無駄なこだわりで周囲や会社に迷惑をかけまくった挙げ句初監督作が大コケするエピソードがあって、「なんだ、ホルスじゃん」と思ってたら近所で上映があったので足を運んだ次第です。繰り返しますが、NHKは実話だなんてひとことも言ってないけどね。

だいたいこの人は、後々、出資してくれた恩人・宮崎駿の家を抵当に入れちゃうほど金食い虫で、その作品に対する姿勢は真摯というよりただの世間知らず。東大卒の世間知らずの大層ご立派な理想主義が作品の端々に見え隠れするから好きじゃない。

しかしこの映画は面白かった。
冒頭の狼と格闘するスピード感とか、人物が正面に向かって走るとか(アニメとしては難しい)、アニメの技術がめちゃくちゃ高い。もしかするとセルアニメで可能な技術は全部やってるんじゃないかってくらい。

朝ドラでは、ヒルダ(と思われる)のキャラがなかなか決まらない(高畑勲が気に入らない)というエピソードがあって、実話じゃないんだろうけど実話なんだろうと思うのです。
というのも、この当時、アニメや漫画のキャラクターは「記号」だったのです。
手塚治虫は稀代のストーリーテラーでしたが、それでもまだ「主人公」「悪人」「美人」「コメディー要員」など、その顔は見た目で分かる「記号」として描かれていたのです。

しかしヒルダというキャラクターは、その見た目も性格も善悪両方を内包している難しい設定なのです。
善人に見えるけど実は悪人(あるいはその逆)というキャラ立ちは簡単ですが、ヒルダはそうじゃない。
これ、凄いことなんですよ。
主人公が苦悩を抱えアニメとしての物語表現が一気に複雑化した約10年後の「ガンダム」ですら、サビ家の皆さんは分かりやすく悪役顔でしたもん。

実はこのアニメの挑戦は画期的だったのですが、ヒットしなかったが故、日本のアニメ界に何の影響も与えていないし、なんなら長らく無視された存在だったんです。
後のアニメに多大な影響を与えたと言われることがありますが、誤解です。
制作から四半世紀くらい経ってやっと評価されて「実は画期的だった!」というのが正解。
つまり高畑勲の自己満足映画なんですよ。
時代が読めていた訳でもないし、世間との関わり方とか、予算とか締切とか、死ぬまで全然ダメだった人。

ただ、おそらくこの映画は、(世間一般に対してではなく)スタッフに対して「こういう表現が出来るんだ」というアニメの可能性というか、希望を与えたんだと思うのです。
その道を(KYが故に)拓いたのが高畑勲で、それ故、彼は仕事を続けられたんだと思うんです。



(1968年 東映)

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