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ザ・ファブル



目玉焼きハンバーグ的な面白さ。おそらく制作側は意図していない『白痴』の物語。

監督:江口カン/ユナイテッド・シネマとしまえん/★3(68点)本家公式サイト
以前も書いたかもしれませんが、「かつてナイーブだった男の子がマッチョオヤジになる問題」というウチのヨメが嘆いている問題があって、その代表格が西島秀俊とこのV6岡田君なのです。岡田君ファンの知り合いの女子なんか「あのゴリラ」呼ばわりしてましたからね。昔のナイーブ男子は違ったんだけどな。尾美としのりとか宮川一朗太とか。そこかよ。
そういった意味では、向井君も福士蒼汰君もまだナイーブ側の顔なんだよなあ。ヤクザやイカれた殺し屋の面構えじゃない。なんでこのキャスティングなんだろう?

そうした点も含めて、豪華俳優陣が全然活かせてない気がします。
六角精児やモロ師岡は尺の関係でカットされたの?もしかするとスピンオフドラマ要員?何なの?
いやぶっちゃけ佐藤二朗も光石研も活きてない。柳楽優弥もこんなもんじゃない。だって『ディストラクション・ベイビーズ』だよ。
特別出演的な佐藤浩市はともかく、この映画で唯一「葛藤」のあるいい役もらったのは安田顕くらい。井之脇海君なんか超もったいない。
これ、ジャニーズ映画でありがちなんだけど、他の役者は誰も得してない。

でも岡田君のことは悪く言いたくないのです。
だって、あおいタンが選んだ人だから。

V6ゴリラのジークンドー映画としては『図書館戦争』の次くらいに面白かったですよ。
しかしジークンドー岡田はやたら映画出すぎじゃね?何本出演しなきゃいけないみたいな契約でもあるんだろうか?マイルス・デイビスのマラソンセッションかよ。

というわけで面白かったことは面白かったのですが、お子様ランチ的とまでは言いませんが、ハンバーグに目玉焼きトッピングくらいの「男の子ってこんなの好きよね」程度の面白さだと思うのです。

そもそも、ワル&アクション&時々コメディという『ビー・バップ・ハイスクール』から進歩のない典型的「ザ・ヤンマガ」設定で、純情黒髪美少女(ちなみに茶髪は峰不二子風)を武骨なゴリラが助けるというベタな展開。
この山本美月に(『探偵はBARにいる3』の前田敦子くらいの)ほんの少し「したたかさ」があれば、話の成熟度が全然違ったのに。
要するにこの映画、役者の扱いもそうですけど、細かい味付けができていない。ハンバーグに目玉焼きが乗ってりゃ喜ぶんだろ?程度の腕の料理なんです。

だから「制作側は意図していない」と思うんですが、実はこれドストエフスキーの『白痴』と同じ物語だと思うのです。黒澤が「フィルムを切るなら縦に切れ」って言ったあれね。
つまり、純真無垢な心が人を救う王道物語なのです。

そう考えると『レオン』も同じだな。殺し屋に『白痴』話が多いのはなぜだろう?
「殺しの非情さと反比例する純真無垢な心」という文学的な理由だろうか?
「バカだから殺し屋なんかにさせられた」という現実的な理由だろうか?



2019年6月21日公開(2019年 日テレ=松竹)

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