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ガルヴェストン



大人のフランケンシュタイン。


監督:メラニー・ロラン/新宿シネマカリテ/★4(70点)本家公式サイト
最初は「男の死に様映画」かと思ったんです。男は「美学」好きで、特に「死に様」に美学を感じる。ルイ・マル『鬼火』とか北野武『ソナチネ』とかペキンパーなんかが典型例ですな。大勢の孫に囲まれながら安らかに天寿をまっとうしたいなんて野郎は誰一人いない。皆『灰とダイヤモンド』みたいに死にたいと思っている(<そうか?)。
でもそうした思想を女性監督が描写するのは珍しいと思ってたんですよ。ましてやメラニー・ロラン35歳。「男の死に様カッコイイ!」とはならないはず・・・と思ったら案の定。結果「男って馬鹿よね」映画。

さて、別な感想。

ベン・フォスター演じる主人公は40歳、エル・ファニングは19歳の設定。
私は約10年前に吉田恵輔『さんかく』のコメントで、「30男が15歳の少女に振り回されるのと40のオッサンが20歳の娘に振り回されるのとどっちが問題か問題」について語りましたが(なんだそれ?)、男40歳代・女20歳前後という年齢設定って絶妙だと思うんです。
男が30歳代だと互いに異性を意識した「男女」の物語になってしまうし、男が50歳代になると抑制の効いた「(疑似)親子」の物語になってしまう。異性と抑制のギリギリのライン。実際この映画でも、ベン・フォスターは一時エル・ファニングと離れた時に『風俗行ったら人生変わったwww』的なことをします。エル・ファニングに手を出せない理性はあるけど、本能としては性欲がある。
この「理性と本能のせめぎ合い」で自分を律することのできる男。これがメラニー・ロラン(35歳女性)が求める「男の美学」なのです。

しかしこの映画の本質は『フランケンシュタイン』の本歌取りにあると思うのです。

(精神的に)無垢な少女が近づいた男は怪物です。
しかし男は「理性と本能のせめぎ合い」で彼女に触れようとしません。もし彼女に触れたら(彼女が自分の人生に大きく関わったら)、彼女を傷つけてしまうことを知っているからです。
ボッコボコにされたベン・フォスターの顔も、まるで怪物を暗示しているようです。
ああ、そういやフランケンシュタインの原作者を描いた『メアリーの総て』はエル・ファニングだったな。

実はそんなに目新しさは無い映画です。むしろ古典的と言ってもいい。
ただ、ワンカット長回しとか、海岸の美しい画面だとか、映画らしい情景を盛り込もうと努めている点に好感が持てます。
そして、「エル・ファニングめっちゃ可愛い!」ってメラニー・ロランが言ってる気がするんですよ。ほら、最近よく女子が女子を褒めるじゃないですか。それが伝わってくる。
でもそれは「男の美学」とは全く別世界の視点なんですよね。



日本公開2019年5月17日(2018年 米)

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