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女王陛下のお気に入り



もはや面白いんだか面白くないんだか。ただただ怖い。


監督:ヨルゴス・ランティモス/渋谷シネクイント/★4(70点)本家公式サイト
いやあ、アカデミー発表前だったんですけど映画館が混んでましてね。しかも若い観客が多い。『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーン人気なんすかね?可哀想に、こんな映画観せられて。ワハハハ。
いきなりどうでもいいことを書きますけど、鳩飛ばして銃で撃つリアル・クレー射撃やってるじゃないですか。オリンピック競技でもあるクレー射撃、あの円盤には未だに鳩の絵が描かれているそうですよ。

この映画、どういう技術で撮ってるんでしょうかね?極端な広角レンズというか、時に魚眼レンズも使ってる。ここでは「焦点距離が極端に短いレンズ=超短焦点レンズ」と呼ぶことにしますが、この映画は移動やパンが多く、カメラが動くと画面の周辺が歪むんですよね。
これ、意図的だと思うんです。
つまり、この映画で描かれているのは「歪んだ世界」なのです。

そしてこの映画は、女性三人の視点だけで描かれる。
民衆だの戦争だの言ってますが、そんなものは一切描写されない。
なんなら、アン女王という手掛かりだけで、これが何年なんだかすら客観的に提示しやしない。

アン女王戦争という北アメリカの植民地を巡る英仏の戦争があるので、だいたい『ラスト・オブ・モヒカン』に近い時代(正確には『ラスト・オブ・モヒカン』は50年近く後の話のようですが)。
お遊びで鳩を撃ち殺し、女は男に押し倒されるのが当然だった時代。
そんな時代に世界を牛耳った女たち。ヨルゴス・ランティモスの食指が動いた理由かもしれません。

しかし彼は史実を描くことに主眼は置いていないはずです(史実に忠実なストーリーらしいけど)。
私は、彼の意図は「超短焦点レンズ」に込められているように思うのです。

つまりこれは、「歪んだ世界」の「三人だけ」が「世界を牛耳ってる」話なのです。
彼女らの愛憎劇の延長線上で戦争が行われ、人が死に、国民は重税に苦しみ、モヒカン族は最後を迎えるのです。
なんと恐ろしい。
この映画の描く恐怖は、女たちの愛憎劇ばかりでないのです。

言い換えれば、焦点距離の短い視点で行われる政治の危険性を提示しているように思えるのです。
これは現代社会、まさに「今」の国際政治に対する揶揄に違いありません。
だって、ギリシャの奇人ヨルゴス・ランティモスがイングランドのコスチュームプレイに憧れただけ、なんて考えられないもの。

一歩間違えたら「短焦点の政治」が「女だから」と解釈されかねないところを、男どもを頼りなく描くことで払拭する巧みさ。ミカンぶつけて遊ぶ男どものシーンは意外に重要(笑)



日本公開2019年2月15日(2018年/アイルランド=米=英)

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