レムが生前外国語翻訳を許可しなかった初期小説が原案なのだそうですね。
観た時は知らなかったのですが、奥さんウンウンのくだり辺りが『ソラリス』っぽいなと思ってはいたんです。「夫婦間のなんとなく不穏な空気」って他のSF映画で観たことない。
レムはこの原作を「共産主義の未来をバラ色に描きすぎた」と反省していたそうで、そう聞くと、なるほどこの映画は時代を経て観ると大きく見方が変わるかもしれないと思ったわけです。
あくまで原案であり映画はだいぶ翻案されているのでしょうけれども、この映画の制作側も制作意図の根底には「バラ色の未来」という思想があったのかもしれません。
そう考えるとこの映画は「集団で苦難を乗り越えて新世界に辿り着く」という話に見えるのです。
ところが我々は、もはやチェコスロバキアという国がないことを知っています。
共産主義、全体主義がその後どうなったかを知っています。
そうした現代の目で見ると、この映画が描いているのは「個人の苦悩」であり「別世界への脱出」に見えるような気がします。
日本公開2018年5月19日(1963年/チェコスロバキア)
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