いきなりウィキペディア情報を転載する。
「例えば歴史上実在した柱頭修行者聖シメオンを描いた『砂漠のシモン』では最後にシモンが悪魔の誘惑に負けるので反キリスト教的作品と見ることは可能だが、純粋な行者であるシモンに対する悪意を映画の中に感じることはできない。」
誰が書いたのか知らないが実に的確な指摘で、ブニュエル爺のキリスト教の扱いは一筋縄ではいかない。
実際この映画でブニュエル爺は、シモンに対しても悪魔に対しても悪意ある描き方はしていないように見える。
むしろブニュエルが悪意をもって描いているのは、シモン目当てに集まる群衆やダンスに興じる群衆たちに思えるのです。
「今日まで無神論者でいられたことを神に感謝する」という名言を残したブニュエル翁だけにアンチ宗教のイメージが強いが、ちょっと違う気もする。
例えるなら、猫は別に嫌いじゃないけど、猫好きの人が嫌い。そんな感じなんじゃないかな?違う?
もっとも、ブニュエル翁は「煙に巻くのが仕事」みたいなところがあるから、何が本心か分からないけどね。
追伸
今回いろいろ調べて知ったことがある。
ブニュエル研究については最近四方田犬彦が上梓したそうだが(読む気はないけど)、四方田犬彦は1984年に開催された「ぴあフィルムフェスティバル」のブニュエル特集を「日本におけるブニュエル元年と呼びたい」と思っているそうだ。全32作品中29本が上映されたそうで、それまで日本では「ブニュエル暗黒時代」と見なされていたメキシコ時代の作品に光が当てられたそうですよ。
実際私がブニュエルを初めて観て衝撃を受けたのは85年で、当時上映されるのはフランス作品ばかりでした。
なるほど確かに、メキシコ時代の作品は「意外!」って作品も多々あり、例えば『嵐が丘』なんて嵐が丘史上最も(原作から遠いくせに)本質を突いてたりするからね。
あともう一つ(読んでもいない)四方田犬彦の本から。
ブニュエルと日本って縁がないと思ってたんですよ。そしたら唯一日本人で、60-70年代のトンガッた批評家・金坂健二がブニュエルにインタビューしてるんだって。
(1965年 メキシコ)
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