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ファントム・スレッド



PTAのイカレっぷりが高度すぎる。こんなスリリングな食卓シーンは初めて観た。

監督:ポール・トーマス・アンダーソン/恵比寿ガーデンシネマ/★4(88点)本家公式サイト

自慢していいっすか。私、この映画を観ていてヒッチコックを思い出したんですね。そしたらポール・トーマス・アンダーソン自身がヒッチコックの『レベッカ』を意識したと語っていたんでね、俺も捨てたもんじゃないなと。自慢しちゃろ思いまして。

私は、PTAことポール・トーマス・アンダーソンの作品は文学的で難解だと思っています。スティーブン・ソダーバーグみたいにスカしてないので親近感がある人もいるかもしれませんが、基本的には同じ系統の人じゃないかと。むしろソダーバーグより天才的、いやイカレっぷり度が高く(笑)、逆に危険なくらい。

PTA作品の主人公は“孤高の男”が多いと思うんです。本作も例外ではない。ただ今回は“女”視点が多いんですね。これは珍しい。そして男と女の視点で、男と女の主従関係が描かれる。

「完璧な身体」と言いながら「胸がない」「お腹が丸い(by姉)」と言う。そんな体形を“俺様の作った”ドレスで綺麗に魅せる。裸体が美しいわけじゃないんですよ。俺のドレスがうまいこと引き立つから「完璧な身体」なんですよ。そこ間違っちゃいけない。そんな隷属する女を俺様がドレスでキュッキュと縛る。ほーら、難解でしょ?

ところが主従関係、つまりSとMが逆転する話なんですね。最近ではポランスキーの『毛皮のヴィーナス』とか、古くはブニュエルの『昼顔』とか、日本なら若松孝二『胎児が密猟する時』とか。ほーら、狂ってるでしょ?

この家の中に階段がありますね。それがヒッチコックを想起させる要因の一つではあるんですが(『レベッカ』というより『断崖』だ)、私の中で印象的な立ち位置が2つあります。

女がドレスを着て出てくる。男はそれを見上げる。SM関係では「男=上、女=下」なんですが、実際の立ち位置は逆。

「男が倒れた!」ってんで女が階段を駆け上がるシーン。SM関係では「男=下、女=上」ですが、ここも同様に逆なんです。

そしてこの何度か写される階段シーンがどうも「不安」に見えるんです。気のせいかもしれませんが、普通にカメラが移動しているだけじゃない気がするんですよ。『めまい』ショットでもやってたのかな?そんな風にも見えなかったけど。
なんかもう、階段を上り下りするだけで不安で不穏で倒錯した空気があるんです。もし計算なんだとしたらイカレた演出してると思う(もし私の気のせいなら私がイカレている)。

そして食卓シーンね。出会いもレストランなら、喧嘩するのも食卓。何だろう、この緊張感。ヒリヒリするよ。

このイカレた話(PTAオリジナルらしい)をイカレた演出で見せながら、すごく腑に落ちる物語に持っていく手腕。PTAすげーよ。イカレてるよ。



2018年5月26日公開(2017年 米)

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