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The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ



今までポップアートを描いていたソフィア・コッポラが、がっつり油絵・古典画を描いてきたような印象の女性映画。
監督:ソフィア・コッポラ/TOHOシネマズ新宿/★4(75点)本家公式サイト
我が家では「コリン・ファレルを笑う会」と「ニコール・キッドマンに二流女優のレッテルをベタベタ貼る会」というのを夫婦二人だけでやっていて、加えて宇宙と交信できるMJ(『メランコリア』『スパイダーマン』)、もはや宇宙人のエル・ファニング(『パーティで女の子に話しかけるには』)が結集。しかも監督は親父よりセンスがいい(笑)ソフィア・コッポラ。それで『白い肌の異常な夜』。なんじゃそりゃ!超絶ウヒウヒ映画の予感。映画を観る前の環境設定が面白すぎる。ジョルジオ・モロダーがスザンヌ・ヴェガの曲をブリトニー・スピアーズに歌わせた時くらい面白い設定だった。

ところが、そんな私の勝手な面白妄想をソフィアは凌駕していくんですね。

まるで洞窟のような森。闇に浮かぶ白い服。映画らしい情景。撮影監督フィリップ・ル・スール(たぶんソフィア作品は初めて)の手腕なんでしょうけど、どこを切り取っても絵画のような画面。センスだけで撮ってたソフィアが、計算された画面で堂々とした映画を構築してきた印象。
私はソフィア・コッポラを「女子大生的私小説映画作家」と評していたのですが、ここんとこ少しずつ変化というか挑戦してるんですよね。『SOMEWHERE』では男目線、『ブリングリング』では自分とは価値観の異なる世代、そしてこの映画では私小説的要素を排除した、言わば「古典画」。

でもやっぱり彼女は女子を撮るのが好きなんです。結果、女子視点の女性映画になっている。
『白い肌の異常な夜』がドン・シーゲル×クリント・イーストウッドというゴリゴリマッチョ作品なのに対し、この映画は180度視点が違うと言っていい。
だから、女同士のやりとりが、観ていて落ち着かない。ミゾミゾする。
そして女性視点だからこそ、門越しのラストショット(=並ぶ女性たち)に込められたメッセージを感じるのです。

隔離された女の園は幸せな空間だと思っていた。(男の)排除が秩序であり、幸福だと信じていた。砲弾の音が近づき不安もあるけれど、自分たちの居場所はここしかないと信じていた。いや、そう自分に言い聞かせてきた。しかし、一度別世界を知ってしまったら、再び女の園に(形だけ)戻っても全てが元に戻るわけじゃない。

今ではもう、彼女たちの視線は外の世界を向いている。

同じことは世の中のあらゆる場面で言えるのかもしれません。
これをそのまま、社会における女性の立場に置き換えてもいいし、人種差別に置き換えてもいい。旧態依然とした変われない体質の組織に置き換えてもいい。むしろ普遍的な話にすら思えてきます。

もしかすると、退屈と孤独と空虚を描いてきた作家=ソフィア・コッポラが今回挑んだのは、変化球の「鶴の恩返し」を通した変化球の恐怖映画。変化に対する恐怖(あるいはその先にある希望)だったのかもしれません。



日本公開2018年2月23日(2017年/米)

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