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スリー・ビルボード



ミズーリ州。三者六様。うさぎの置物7ドル。


監督:マーティン・マクドナー/ユナイテッド・シネマとしまえん/★5(90点)本家公式サイト
「あんたが壊したうさぎの置物。代金もらいにきた」と彼女は言うだろう。
そいつに危害を加えることが正解ではないことを二人は知っている。
そいつは派兵先(おそらくイラク辺りだ)で事件を起こしているかもしれない(まるで沖縄だ)。それでも、彼女らは暴力が正義ではないこと、それが解決ではないことを、今では分かっている。

原題は「ミズーリ州エビングはずれの3つの看板」。

エビングというのは架空の街らしいが(よく知らないけど)、ミズーリ州は当然実在する。実話じゃない(よね?)のに具体的地名をタイトルに使うからには、何らかの意味があるように思うのです。
ただ、私にはミズーリ州の持つ社会的、歴史的、政治的な意味は分かりません。んー、強いて言えば、白人警官が無意味に黒人を凹ったり射殺したりするのがミズーリ州、銃乱射事件が起きるのがコロラド州ってイメージ(<ひどい偏見)。あーでも、あながち間違ってないかもしれないなぁ。

町山智弘はこのフランシス・マクドーマンドを「女クリント・イーストウッド」と評したそうですが、実際、彼女のキャラ設定もさることながら、映画自体もイーストウッド作品ばりに「星条旗」が写り込み、分かりやすい“勧善懲悪”を否定します。
イーストウッドがアメリカのあるべき姿を描き続けるように、またタイトルに「ミズーリ州」を掲げていることからも分かるように、この映画もまたアメリカの現実を描いているのです。
9.11以降「復讐よくない」風潮だったのに、台頭する差別主義、極右思想に対する警鐘なのかもしれません。

ほぼ同時期に公開されたキャスリン・ビグロー『デトロイト』(これはミシガン州だ)も同種の警告映画でした。アメリカの文化人達は危機感を募らせているのかもしれません。
ただ『デトロイト』は、キャスリン・ビグローが「キーッ!」ってヒステリックに文句言ってる印象ですが(笑)、この『スリー・ビルボード』は落ち着いて「もっとこうできないかな?」「こうすれば良くなるんじゃない?」と言ってるような気がするのです。

劇中「善人はなかなかいない」という本が出てきます。私は知らなかったのですが、フラナリー・オコナーという人の短編集だそうです。
「なかなかいない」ということは「全くいない」わけじゃないんですよ。善人はいる。必ず。
これはそういう映画なんだと思うんです。

スリー・ビルボード=三者三様(マクド―マンド、警官、署長)の視点として語られますが、それぞれの二面性が描かれる。三者六様。
誰にも善悪両面がある。署長だけは周囲からの信頼も厚い善人一辺倒に見えるけど、キリスト教的には自ら命を絶つことは「悪」なんですよ。

この善悪両面のどっちに転ぶかなんだと思うんです。
善人はなかなかいない。でも誰もが心の中に「善」があるはず。ただ、ダークな力に呑み込まれがちなんだ。

つまりね、お前ら『スター・ウォーズ』をちゃんと観ろって話ですよ。お祭り騒ぎしてるだけじゃなくて。ま、俺は観てないけどね。



日本公開2018年2月1日(2017年/英=米)

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