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予兆 散歩する侵略者 劇場版



これだよ、これ。この設定だったらこういう話にならなきゃ。

監督:黒沢清/新宿ピカデリー/★4(75点)本家公式サイト
岸井ゆきのを見るために『おじいちゃん、死んじゃったって。』を観ようとテアトル新宿に向かってたんです。で、クソ映画館=新宿ピカデリーの前を歩いてたらこの映画のポスターがあったんです。ヨメが見つけましてね。何これ?何これ?と言い出したわけです。私はこの映画を黙殺してたんですよ。元々WOWOWドラマだし、そろそろ黒沢清見切り時なんじゃないかと思っていたし、だいたい『散歩する侵略者』が恐ろしくツマラナかったもので。
そんな話をしながらポスターをよくよく見たら、岸井ゆきのが出てるじゃないですか。おまけに石橋けいに渡辺真起子も出ている。そりゃ観なきゃ(<そこかよ)。動線を無視したクソ映画館新宿ピカデリーだけど、観なきゃ。というわけで急遽予定を変更して観たわけです。

面白かった。本体よりはるかに面白かった。

夏帆ちゃんはスクリーミング女優(叫ばないけど)の新境地を開拓したし、天才・染谷将太はその天才っぷりを遺憾なく発揮し、東出昌大はその木偶の坊っぷりを遺憾なく発揮している。ついでに言うなら、岸井ゆきのの良さを引き出してるし、石橋けいらしい石橋けいだし、渡辺真起子らしい渡辺真起子だった。
最後の廃工場(?)の緊迫感なんか、黒沢清が好きなアサイヤスぽかったよ。ぽいぽい。

設定は本体と全く同じ。大きなストーリーだって同じ。でも、取り扱う「概念」、言い換えれば「物語」の切り取り方が変わるだけでこうも変わるものか、という典型。
もしかすると黒沢清は、本当はこっちを撮りたかったんじゃないの?と思うほど。

黒沢清は「この世界は不安定である」ことを描く作家で、あの安っぽい物語だった『散歩する侵略者』は(おそらく原作のせいなんだろうけど)、その本質が見失われていたように思うのです。
なんかこう、目先のドタバタに追われていたというか、何を描きたいのか分からないまま話が進んでいった。
しかし本作では「この世界は不安定だ」とはっきり言うんですね。それはテレビドラマだったからかもしれませんが、テーマを明確に提示しちゃったから、全ての出来事がテーマに沿って描かれていることが手に取るように分かる。分かるから何をやってるのか理解できるし、理解できるから楽しい。

たしかに突き詰めていくと「何で夏帆ちゃんは特別なの?」と思うんですけど、なんだか飲めちゃったんです。なんだか許せるんです。
黒沢清もそう言っていたようですが、「ああ、世界を変えるのは女性なんだ」って素直に思えたんです。
男はね、「手が痛ぇ」とか言ってのたうち回ってるだけなんですよ。それが世の中なんです。

『散歩する侵略者』は「愛」の概念の扱いが、龍平の「なんじゃこりゃぁ〜」的な親父パロディでしか表現されませんが、現実問題として、「愛」なんて概念、人間だってはっきりわからないもんですよ。
この映画は、夏帆ちゃんの「献身的な戦闘」が一つの「愛」の形なんだと、その概念を提示してくれたんだと思います。



2017年11月11日公開(2017年 日)

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