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婚約者の友人



意地悪オゾンの女性賛歌。「幸せになってほしい」と言うのは簡単。

監督:フランソワ・オゾン/シネスイッチ銀座/★4(87点)本家公式サイト
二人の男が女に言う。「君には幸せになってほしい」と。
一人は婚約者。戦地から送ってきた手紙で、「僕に万一のことがあったら」という前提付きで。
もう一人は婚約者の友人を名乗る男。どのシーンで言ったのか記憶は定かではありませんが、彼女を振る時だったように思います。

つまりこの映画、「男は“幸せになってね”って簡単に言うけど、言われる側の女は大変なんだよ」って映画なんだと思うのです。

この映画、ヒロインのアンナが歩くシーンが多い。いや、列車も含めて移動シーンが多い。そして彼女の移動はすべて彼女の意志で動いているのです。

駅のシーン。
“婚約者の友人”を見送るアンナ。カメラはホーム側から動きません。あくまでカメラはアンナ側にあるんですね。
一方、アンナが列車でフランスへ旅立つシーン。もちろんホーム側からのカメラもあるのですが、カメラは切り返し、列車側のアンナから見送りに来た老夫婦(婚約者の両親)を写します。
この似たようなシーンだけ見ても、ボンヤリ撮ってるわけではなく、アンナの視点で描かれている映画であることが分かります。

また別のシーンでは、アンナが歩みを止め踵を返す場面があります。背後から写していたカメラが、振り返った彼女の表情をとらえ、再び歩き出すまでをワンカットに収めています。
彼女が“意志”を持って行動していることを示す映画的なシーンです。

この映画は、“嘘”をキーワードにしながら、確固たる意志を持って行動する女性の物語なのです。彼女が、秘密を抱えて“嘘”を突き通すのも、彼女の強い意志なのです。

フランソワ・オゾンはなんて意地悪なんでしょう。
「そこで終わっていいじゃねーか」「そこで終わっていいよ」「そこでめでたしめでたしでいいじゃんか」「もうそこで終わりなよ」「お願いだから、もうやめてあげて」。
オゾンは決して楽な状況を作りません。必要以上に過酷にいじめる訳じゃないけど、次から次へと展開して、ヒロイン=アンナを“安住”させません。ほんと、オゾンは人が悪い。

それでも人は生きていかねばならないのです。自分の意志で、歩き続けなければいけないのです。

かつて(今も?)「死の美学」映画が多くありました。それはそれで嫌いじゃないのですが、“時代”と“男の考え方”だったように思います。例えばルイ・マル『鬼火』のように、そういう映画の場合「彷徨ってる」んですね。
しかしこれは、しっかりと自分の意志で歩く映画です。今時の(第一次世界大戦直後の設定ですが)女性を描いた、いやむしろ、現代の女性たちに向けたエールなのかもしれません。

男はね、言っちゃうんだよ「君には幸せになってほしい」って。でもその気持は嘘じゃないんだよぉ。



日本公開2017年10月21日(2016年/仏=独)

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