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三度目の殺人



福山雅治が象に触れる映画。象は消失したり、猫を抱いて象と泳いだりする。我々は本当に象を理解しているか?

監督:是枝裕和/TOHOシネマズ渋谷/★4(88点)本家公式サイト

私、『海街diary』の桜の花びらが広瀬すずの額に張り付く自転車シーンを「実写の魅力」と呼んで、凄く評価してるんですね(映画自体は★3の評価なんだけど)。
その同じシーンについて、あの天才女優=蒼井優先生がテレビで語っていて、先生は「広瀬すずは“持ってる”」という感想を持ったそうです。
それはやっぱり女優の視点なんですね。
このシーンが“象”なんですよ。人によって見方が変わる。これはそういう“象”に触れる映画なのです。
え?象の話が分からない?映画でも言ってるように有名な話じゃないですか。
「Q:象を冷蔵庫に入れるには3つの作業がある。何か?」
「A:冷蔵庫の扉を開く。象を入れる。扉を閉める」

その蒼井優先生に「持ってる」と言わしめた広瀬すずの法廷シーン。もうね、神がかってるんですよ。
あの大きな瞳に、迷いとか諦めとか決意とかが見えるんです。すげーな。広瀬すずすげーな。

そして役所広司が素晴らしい。是枝作品初めてだよね?こんなケーリー・グラント的「何考えてるか分からない」役所広司の名演を見たのは黒沢清『CURE』か原田眞人『KAMIKAZE TAXI』以来かもしれない。今年は『関ヶ原』で家康もやったしね。いろんな映画賞獲るんじゃない?いやー、役所広司幅広いね。日本の仲代達矢。あ、仲代達矢も日本人だ。てか、無名塾だ。

ああ、あと橋爪功ね。2時間サスペンスを見る帝王の私からしたら、橋爪功は数々の殺人事件を解決したわけですよ。そんな彼が過去の事件を後悔するとか感慨深い(<間違った映画の見方)。

ついでに言うと、この映画で一番好きなシーンは、裁判長が「犯人性の審議も加えるということで」って言う所。
満島真之介に説明する体で吉田鋼太郎が観客に向けて解説しますが、あの裁判長の表情とカット割りで分かるんです。ていうか、分からなきゃいけない。あれ、大人の世界で「握る」って言うんですよ。

私は是枝監督を「愛情の距離感を描く作家」と評しています。

正直、前2作『海街diary』『そして父になる』はあんまり好きじゃないんです。
何故かと言うと、いずれも完成度は高くあくまで相対的なものなんですが、なんかこう「愛情の距離感」が近いというか、ベタッとしてるというか、分かりやすいと思うんです。

私が思う是枝の「愛情の距離感」は、もう少し突き放してた気がするんです。突き放してるからこそ「距離感」が分かる。そういう作家だったと思うのです。ぶっちゃけ、ティム・バートンと同じで、実の父親が死んだ辺りからベタついてた。

そして本作は、その突き放した距離感が戻ってきたように思うのです。
だって、役所広司と広瀬すずは1枚の写真以外、“現実の中では”触れ合うことはないからね。

あとすっかり忘れてたけど、是枝はドキュメンタリー出身なんです。元々、新聞記事から想像を膨らませたような、一つの事件の“事前”や“事後”を描くことが得意だった。今回久しぶりにそれも戻ってきた。
それと、『誰も知らない』で評した「毎度こんな話を撮って楽しいのかねえ?」感も戻ってきた(笑)

いま、我々の周囲は情報で溢れている。国際問題からしょーもないワイドショーネタまで、様々な媒体で24時間365日情報を得ることができる。斉藤由貴が出演してたのなんてネタなんじゃないかとさえ思う。
だがその溢れた情報で、我々は本当に“象”を理解しているのだろうか?耳だけとか鼻だけの情報じゃないのか?鼻を知っただけで象を理解した気になってるんじゃないのか?
世界は、そんな単純明快なもんじゃねーんだよ、と是枝が言ってる映画。

そんな世の中だからこそ、映画の中だけでも単純明快がいいって考えもあるけどねー。

2017年9月9日公開(2017年 日)

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