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美しい星



躍動しないSF。不条理劇の時代。ちなみに俺は六白金星。

監督:吉田大八/シネ・リーブル池袋/★3(62点)
本家公式サイト
原作未読。1962年に書かれた長編小説だそうで、東西冷戦下の核戦争による地球滅亡の危機を、この映画では地球温暖化による地球の危機に翻案しているようです。
正直、面白かったです。

しかし本当は、『桐島、部活やめるってよ』は大好きな私ですが、実は吉田大八はそれほど評価していないのです。「ハジけた原作を凡庸にする監督」というのが私の評価で、『桐島〜』は凡庸な原作の誤読が功を奏したというのが私の解釈。その割に吉田大八作品は全部観てるので、決して嫌いではないんですがね。

ところがこの映画を観て気付いたんです。もしかすると吉田大八は「不条理劇」が好きなのではないかと。この映画は不条理劇です。『桐島〜』だって「ゴドーを待ちながら」なんですよ。監督デビュー作の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』なんて不条理極まりない。その時は知らずに観てたけど、『腑抜けども〜』は本谷有希子なんですよね。先日、本谷有希子嬢にお会いする機会があったんだけど、小柄で華奢でめちゃめちゃ可愛い女性でした。こんな可愛い人があんなイカレタ話を書いてると思うと興奮する。あ、話が横道に逸れてる。

今年のカンヌ映画祭の受賞作は不条理劇が目立ったという。世界の不安が投影されているとも。不条理劇が流行る時代は、不安感とか閉塞感が蔓延していると言われてるそうです。
つまり今は「不条理劇の時代」。もしかすると、吉田大八の時代が来たのかもしれません。それはオーバーにしても、この映画は時代(の空気感)が投影されていると思うのです。

「自分は火星人だ」と思い込むのと、「この水は特別」と信じるのは同義なのです。
この映画の肝は、『地球に落ちて来た男』ジギー・スターダストではなく、そう思い込んでる“人間”であるという点にあります。いやその前に、会話劇がクライマックスだというのが原作の肝なんでしょうけどね。あの討論シーンに三島らしさが集約されている。
「この水は体に良いからみんなに勧めよう」というのと「危機に瀕した地球を惑星連合が救おう」というのは同じで、それはある種の人間の「傲慢」であり「業」なのです。いや、人間の持つ「不条理性」なのかもしれません。

その不条理性を、吉田大八は分かりやすく理解できるように提示する。
きっと「不条理が好きな常識人」なのでしょう。だから映画自体が弾けていないように見える。
欲を言えば、映像や演出自体ももっと弾けていいと思うんですよね。

2017年5月26日公開(2017年 日)

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