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この世界の片隅に



世界の片隅に咲いたタンポポの物語。私たちは地続きの場所に居る。

監督:片渕須直/Tジョイプリンス品川/★5(90点)
本家公式サイト
現在ダウン中のシネスケ本家ことCinemaScapeで知り合った仲間のおかげで出会った良作『マイマイ新子と千年の魔法』。それ以来7年ぶりの片渕須直作品。また泣かされちゃったよ。
私は『マイマイ新子』を「土地(場所)が時代を超えて継承され、我々人間はその大地に住まわせてもらっている雄大な話」だと思っているのですが、『この世界の片隅に』も似た感覚があります。

タンポポの綿毛が舞うシーンがあります。黄色いタンポポを抜くの抜かねーのいう台詞もあります(<全然覚えてない)。タンポポはこの映画を読み解くキーワードに違いありません。
すずさんは、広島から飛んできて呉に根を下ろしたタンポポなのでしょう。

タンポポの綿毛の行く先は風まかせです。そこに必然性はなく“たまたま”流れ着く。
すずさんが呉に嫁いだのも、この時代に生まれたのも“たまたま”なのです。
生き残る者、死にゆく者、その境目もちょっとした風向き次第。偶然の重なり。

映画は徹底して市井の人の視点を貫き、リアルな生活感を描写し、何気ない日常を切り取ります。
そこに描かれるのは普遍的な少女の物語であり、私たちと何ら変わらない普通の人々です。それは私たちと時間、空間が“地続き”の世界。逆に、我々が現代に生きている(生かされている)世界も“たまたま”なのだと気付かされます。

“喪失”もこの映画のキーワードでしょう。人々、街、自身の身体。
空想少女すずさんは、唯一の取り柄であった絵を描けなくなることで、空想世界に戻れなくなります。否応なしに現実世界に目を向けなければなりません。
“空想”から“現実”への移行。“喪失”によって知る“世界”。それは『マイマイ新子』が大人の世界を垣間見てしまったのと同じ。後戻りできない世界を知ってしまうのです。

もう一つ“飛ぶ”というキーワードもあります。
前述したタンポポの綿毛。鷺。波の上のウサギ。
鳥は自分の意志で高く遠くへ飛び、別世界へ行くことができます。
しかしタンポポは自分の意志で飛ぶことはできません。根を下ろした世界の片隅で、精一杯花を咲かせるしかありません。
そういった意味でも、現在の私たちと地続きの物語だと思うのです。

2016年11月12日公開(2016年 日)

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