アルモドバルの新作は、ジュリエッタという名の女性の周囲の人が消える話。言わば、世界から人が消える物語。
彼女は、それを自分の持つ運命や宿命のように感じている。まるで見るものを石に変えてしまうメデゥーサの如く、自己に責任を感じている。そういや海の男と関係を持つのはポセイドンに見立てているのかもしれない。
映画を観ている時は気付かなかったのですが、今こうしてコメントを書いていて思うことがあります。
アルモドバルらしい印象的で強烈な色彩で映画は始まるのですが、人が消えていくたび、画面上の“色”も失われているような印象なのです。
単に私の思い違いかもしれません。実際にはアルモドバルの“色”は失われていないのかもしれません。
しかし、そういう印象の映画だったのです。
映画は微かな希望を提示して終わります。
そこに私は、何やら人生のようなものを感じるのです。
世界から消えていった者たちは、美しかった年齢のままで記憶に残ります。
しかし自分は歳をとる。
おそらく、彼女の娘は成長し、美しい大人の女性になっているでしょう。かつての自分のように。
それはもう、哲学のようなものすら感じさせる物語なのです。
2016年11月5日公開(2016年 スペイン)
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