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FAKE



どっちがペテン師だか分かりゃしない。


監督:森達也/ユジク阿佐ヶ谷/★2(30点)公式サイト本家
考えれば考えるほどいろいろ考えさせられる映画で、用意周到に仕組まれた監督のフェイクなんじゃないかとさえ思えてくる。森達也は「僕のこと信じてくれますか?」と聞くが、我々観客はどこまでこの監督を信用していいんだろう?

おそらく監督の意図は、かの騒動の真相を解き明かすことにはなく、一方的な報道による“殺人”を描写することにある。それを「一方的な言い分」だけを描写することで逆説的に浮かび上がらせようとする。
「取材を拒否された」の文字だけで済ませるが、相手側の言い分を聞くための努力は一切描写されない。

少しテクニック的なことを言うと、この監督は「その場に入る」シーンを撮るんですね。
佐村河内の部屋に行く時もそうですが、神山の授賞式、新垣の握手会、常に手持ちカメラの目線で「その場に入る」。そして(会える会えないは別として)何らかのやり取りをする。そして「取材を断られた」旨のテロップを入れる。
この組み合わせで「取材する努力をしている」ような錯覚を観客に植え付ける。佐村河内の弁護士の「(新垣側が)逃げ回ってる」という言葉まで加えて、「こっちは努力してるのに相手が会ってくれない」ような錯覚を観客に与えている。
もし本当に「取材するための努力」をしているのであれば、あるいは(世の多くの論調の通り)神山、新垣を“ヒール”として描こうとするのであれば、相手側の弁護士でも何でも体当たりで突っ込むシーンがあってもいいし、取材お断りの書面でも何でも写せばいい。

要するに、相手側を取材する気なんて毛頭ないんです。
この監督の趣旨は「一方的な言い分」だけを切り取ることにある。

米国人ジャーナリストに問われます「なぜピアノがないのか?」と。
佐村河内氏はシドロモドロで答えます「部屋が狭かったから処分した」。
いやいやいや、音楽家たるもの部屋が狭いくらいで楽器手放しちゃダメでしょ。
この映画「衝撃のラスト12分」という売りでしたが、これが一番衝撃だったわ。
酷い腱鞘炎で弾けないから捨てたって“設定”だったんちゃうんかい!設定ブレブレやないかい!。デーモン閣下やMAN WITH A MISSIONを見習いなさいよ。悪魔や狼の爪の垢を煎じて飲め!

森達也は、こうした矛盾に気付いていたと思うのです。

ハンバーグを食べる際に「手首が痛い」と言うシーンを残し、絆創膏を貼っている指を大写しする。でも、シンセサイザーを苦もなく弾いちゃうんだよ。

「(ベランダに)煙草吸いに行きましょう。いまサングラスを取ってきます」。部屋の明かりを付けるたびに奥さんがサングラスを持ってくる。
でも、外出した際はサングラスしてないんだよね。

監督は、意図的にシーンを選択している。それは“作為”に他なりません。
にも関わらず、彼は言うのです。「二人(夫婦)を撮るのが好きなんだと思うな」「僕のこと信じてくれますか?」

お前がペテン師やん。

正直、コリン星級のブレブレ設定なんかは面白いのだが、それは映画自体の面白さではなく、だいたい、こ汚いオジサンの顔を2時間観ていて楽しい訳がない。

余談

機能疾患は精神的な面から発症することだってある。強いストレスや衝撃で声が出なくなるなんてのがそう。同様に、強い思い込みが機能疾患を引き起こす症例もあるそうだ。
佐村河内がそうだと言い切るわけではないが、必ずしも嘘を言っているわけではなく(本人に嘘を言ってる自覚がなく)、そういう症例の人だという可能性もあると思う。もっとも、機能疾患を引き起こすほどの強い思い込みはある種精神疾患なんだが。

2016年6月4日公開(2016年 日)

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