October 2018  |  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

アイアムアヒーロー



俺も共に逃げ、一緒に戦った。こんな疲労度は『ゼロ・グラビティ』以来。いやあ、メチャクチャ楽しかったよ。

監督:佐藤信介/ユナイテッド・シネマとしまえん/★5(92点)公式サイト本家
「社会の底辺」のダメ男が、「世界がひっくり返って」がんばったら、可憐な女子校生や白衣の天使のイケイケ姐さん達にモテモテ〜って話。この映画の中で共に戦った気分の俺は言いたい。俺も有村架純ちゃんや長澤まさみにモテたい。いやまあ、この女子校生はもはや半分人間じゃないけどな。

なんて冗談っぽく書いてますが、結構本気で言ってます。
実際、パニック初期に塚地が言います。「底辺の俺達の時代になるんだ、なるはずだったんだ」と。

これ、“ダメ男”の話として宣伝されて、観る側も“ダメ男”の話と思って観がちですが、(ダメ男で間違ってはいないんだけど)本当は社会的な“負け組”の男の話なんですね。
だから、怪傑ギリジンこと片桐仁演じる同期で成功した漫画家というエピソードは必要だし、タクシーに同乗する風間トオルの政治家(だったかな?)も“勝ち組”のエピソードとして重要なポイントです。そんな彼らは英雄の立ち位置を観客に植え付ける一種の“記号”として提示されます。
ついでに言うなら、WAHAHA村松演じる30年無事故無違反のタクシードライバーというのも、一過性のギャグに見えますが、こういう堅実な(悪く言えば勝負に出ない)生き方をしている人が社会にはいて、英雄はそれよりも底辺にいるということなのです。

そして、ZQNたちも「過去の記憶」の中で、言い換えれば、自身が過ごした社会生活の中で行動するのです。

ショッピングモールの屋上からZQNたちを見下ろした英雄の胸に何がよぎったでしょう?
もしZQNになったら自分はどんな行動をするだろう?何も無いんじゃないか?もしかすると自分は生きながら死んでた逆ゾンビだったのかもしれない。(<私の勝手な妄想)。

「社会がひっくり返っても俺は変われない」と英雄は言います。
今まさに社会がひっくり返った状態なのです。そして塚地のような負け組は、社会がひっくり返ったら、まるでトランプの大富豪の革命のように、負け組が勝ち組に、勝ち組が負け組に入れ替わると勘違いしてるんですね。
勝ち負けが入れ替わるわけじゃない。ただフラットになるだけなんです。そのフラットな状態の中で、また勝ち負けの序列が出来てくる。実際、ショッピングモールの生き残りの“人間”の中で序列が出来ます。裏切ったり陥れたりします。

ショッピングモールに辿り着いた英雄は、銃というお宝を持ちながら底辺に甘んじます。
彼が“勝ち組”に転じるのは、まるで任侠映画のように極限まで追いつめられて、銃を手に一歩踏み出してからなんです。
銃というお宝を才能と読み替えればこの映画のテーマが見えてきます。
才能を持ってるだけじゃ勝ち組にはなれないのです。『俺はまだ本気出してないだけ』なんて言ってるうちはダメなんです。一歩踏み出して“才能”を使って(できれば他人のために使って)初めて“勝ち組”に近づけるのです。

この映画、ゾンビ映画としてのありようが論点になりがちですが(その点で言えば素晴らしく秀逸なゾンビ映画だと私は思いますが)、“生きながら死んでる”現代人に向けたメッセージとも読み取れます。

余談

『修羅雪姫』『GANTZ』『図書館戦争』をケチ付けながら、何だか分からないけど、意外と佐藤信介好きなんだよね。今回も佐藤信介だから観に行ったし。
最後の銃撃のカット割りががワンパターンという意見を読んだおかげで、好きな理由が分かった気がします(そのシーン自体は「撃たれるZQN」じゃなくて「ZQNを撃つ英雄」がメイン、言い換えれば「彼がヒーローになる瞬間」だから、あながち間違った演出じゃないと思うけど)。

彼の演出(カメラ)って、主人公の目線の高さなんですよ。

例えばパニック初期の街にZQNが溢れ始めるシーン。これハリウッド映画だったら、これみよがしにクレーンでカメラが俯瞰になるでしょう。ZQNたちを俯瞰で見下ろすのって(私の記憶違いでなければ)英雄がショピングモールの屋上に行ってからだと思うんです。
ストーリーの説明上、英雄以外の場所での描写も多少入りますが、基本は主人公の知り得る範囲で観客に情報が提示される。奇をてらったカメラワークじゃなくて、観客と主人公を一体化させるカメラワーク。その一つがカメラの高さ。

思い返せば、『GANTZ』も『図書館戦争』もそうだった気がします。
だから俺は大泉洋と共に逃げたし一緒に戦ったし、ウチのヨメは『図書館戦争』でV6岡田君と福士蒼汰君の間で揺れ動いたのです。

2016年4月23日公開(2016年 日)

comments

   

trackback

pagetop