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ヘイトフル・エイト



監督:クエンティン・タランティーノ/ユナイテッド・シネマとしまえん/★5(90点)本家公式サイト
裏『フォレスト・ガンプ』とでも言うべき“ザ・アメリカン”な映画。なんならグルっと回って『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』。めっちゃ楽しい。
タイトル文字、エンニオ・モリコーネの音楽、長い長いワンカットのオープニング。
なにこのセルジオ・レオーネ感!最高!極端な引きと極端なアップの切り返しとか、もうレオーネ感満載!

いきなり余談ですが、オープニングで観客に印象付けた「雪をかぶったキリスト像」は、後段にも出てくるんですよね。こうした印象的な小道具は「同じ場所」を表現する常套手段ですが、後段は駅馬車が通過したのを切り返しで撮って「キリスト像の裏側」も映す。「実はこうでしたって“裏側”を種明かしする章ですよ」って宣言も兼ねている。こういうところ、本当に巧い。

タランティーノがアメリカ史的なことを語る気なんてさらさら無いのは承知ですが、道具立てがアメリカンなんです。意図的なのか無意識なのか分かりませんが、アメリカらしい、あるいはアメリカでしかありえない設定ばかりを配置する。それも負のアメリカン。裏『フォレスト・ガンプ』。
だって、「お前の息子に俺の息子をしゃぶらせた」的なセリフ、日本じゃ絶対に出てこないって。そんな言葉を本当に口にした日本人は有史以来一人もいないと思うぜ。そしてそれは、日本人が想像する以上に屈辱的なことなんだと思う。

南北戦争や賞金稼ぎってのもアメリカならではなのですが、私が強く感じたのは、大統領への尊敬や敬意がハンパない(リンカーンだからってのもあるかもしれないけど)。
これ、日本の首相じゃ考えられないでしょ?吉田茂くらいだったら尊敬されるのかな?俺、羽田孜にトイレの場所を教えたことあるけど、スゲーとは誰も思わないでしょ?天皇陛下と文通してたってならウヤウヤしくお手紙拝見したくなる・・・より先に「天皇陛下と文通できるわけないじゃない」って思うよね。だけどリンカーンなら信じられるんだよ。少女が髭をアドバイスしたってリンカーンのエピソードのせいなんだろうけど、アメリカ大統領だったら“あり得る”話なんだよ。
そしてそんなほんわかエピソードを信じちゃうほどアメリカ人は大統領が大好きなの。だから選挙があんなに盛り上がるんだよ。

あと、差別ね。ニガーはもちろん、「メキシコ人は犬以下」っての分かりやすいアメリカ描写。人権だ著作権だと権利関係にうるさいのは、深い深い差別の歴史の裏返しだから。
あと、家族愛から発生する遺恨とかね。ま、日本でも仇討ちってのはあるけど、あれは家族愛というより「お家」「体裁」の問題だから。

で、冒頭にセルジオ・レオーネ感ということを書きましたが、セルジオ・レオーネの荒野感に対して雪に閉ざされた密室という設定を持ってくる。男の友情や信頼ということを好んで描いたレオーネに対して、タランティーノは悪女を巡って疑心暗鬼になる男どもを描く。わざとでしょ、ってくらい真逆のことをする。

セルジオ・レオーネがアメリカに憧れて『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』を作り、そんなレオーネに憧れてタランティーノが“ザ・アメリカン”な映画を作る。
何かこう、輪廻みたいなものを感じるんですよねぇ。
そして映画はめちゃくちゃ楽しかった。こんなタランティーノが観たかった!

日本公開2016年2月27日(2015年 米)

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