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バケモノの子



監督:細田守/吉祥寺オデヲン/★3(60点)本家公式サイト

『おおかみこども〜』の母の物語に呼応する父の物語。そう悪い映画じゃないんだけど、青少年向け映画で、オッサンがとやかく言う映画じゃない(と言いながら長いレビュー)
とにかく最初の5分、いや10分、いや20分が退屈で退屈で、十数年ぶりに映画館で寝てしまおうか、あるいは生まれて初めて途中で席を立とうかってくらいつまらないスタートだった。結論を先に言うと、終わってみればそう悪い映画じゃないんですけどね。

何がそんなに気に入らなかったかと思い返すと(それは最初に限らず最後までそうなんだけど)キャラクター設定はステレオタイプなのに、その気持ちの流れがなんだか自然じゃない。

バケモノ役所広司が気まぐれで人間の子を拾おうと思ったのはいいとして、その後、反発する少年にこだわる気持ちが分からない。そもそも少年がついていこうと思った気持ちも分からなければ、自分で転がり込んだくせにいつまでも反発している気持ちが分からない。それよりなにより、早々に出てくる分かりやすく嫌味な親戚が分からない。あれは、腫れ物を触るような扱い(表面上の優しさ)をしつつも影で母親の悪口を言ってる(あるいは自分を邪魔がってる)のを聞いてしまう、ってのが正しい描写じゃないだろうか?

それ以外も、とにかく台詞処理。世の中で一番ダメな脚本って、穴を見て「穴だ」って言うほどダメな脚本はない。

以前も書いたけど、宮崎駿のすごさって、名も無き下級兵士が「あの男ユパです」って上官に耳打ちするところにあるんですよ(『風の谷のナウシカ』ね)。
これ、細田守レベルの脚本だと、上官自身に「おお、お前はユパ!」って言わせちゃうんです。もしかしたら「おお!お前はあの伝説の剣士ユパ!」くらいのことを言わせちゃう。
ところが宮崎駿は下級武士に耳打ちさせることで、下級兵士にまで知られた有名人であること、上官も名前は知ってる伝説の剣士であること、そして上官は世間知らず(無能)であること、それら全部を集約するんです。これ、耳打ちする相手がクシャナじゃダメなんですよ。クシャナはそれくらいのことは当然知っている超然とした存在でなければならないから。
それに終盤でも、しばしばバケモノ役所広司の言葉を回想としてインサートするでしょ。いちいちうるせーよ。知ってるよ、さっき観たんだから。宮崎駿が回想インサートしますかって話ですよ。

細田守が描く中心はいつも高校生くらいの男女で、今回はその心の闇に焦点を当てている。心の闇から犯罪を犯す青少年を「バケモノの子」と呼んでいるようでもある。それは巨大怪獣が街を破壊するような異次元の恐怖ではなく、渋谷の裏路地からつながっているような身近な所に入口がある。少年たちはバケモノの手によってバケモノに育てられるのではなく、己の心の闇を増幅させてバケモノへと堕ちていく。

だから“心の剣”を持てとこの映画は説く。知識を広げ、視野や世界観を広げよと説く。
正直オッサンには説教臭いと感じるのだが、きっと青少年に向けた実直なメッセージなのだろう。
そう考えると、いちいち台詞とか回想インサートとか説明臭いんだけど、伝えたいメッセージをエンターテイメントに消化(昇華)させようという気概は買う。

2015年7月11日公開(2015年 日)

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