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百日紅〜Miss HOKUSAI〜

百日紅監督:原恵一/テアトル新宿/★3(60点)本家公式サイト

杉浦日向子の世界観を見事に描いているが、そもそも杉浦日向子が映画向きじゃない。
故・杉浦日向子は、マンガを描くことよりも江戸時代を描くことを主眼とした人でした。
それはローマを描きたいヤマザキマリと一緒で、そういった意味では全く本質を理解していなかった商業映画『テルマエ・ロマエ』より、はるかに真摯な作品だと評価していい。
そして私の記憶では、「百日紅」は江戸の日常を切り取った短編集で、基本的にストーリーなんかないのです(むしろエッセイに近い)。

ハッキリキッパリ言って、“映画”という形にするには、『テルマエ・ロマエ』ばりに原作を冒涜しないと成立しなかったと思うのです。
この話はテレビなんかで連続全何話形式向きだったよなぁ。イメージ的には『深夜食堂』に近い。

そのせいかどうか分かりませんが、杏とか林檎女王様とか、話題作りが鼻につく。
正々堂々真正面から「これは面白い!」という作品になるのを諦めて、本質的でないところで“価値”を上げようとしているようにさえ見えちゃう。いや、最初に書いたように、原作を冒涜しない真摯な姿勢は評価してるんだけどね。

杉浦日向子の本質は、初期の傑作「合葬」に集約されると思うのです。「合葬」こそ映画化してほしい。しかも実写で。あれ?実写映画化されるんだ?
じゃあ、詳しいことはその映画のコメントにとっておこう(<とっとくのかよ)。

でもこれだけは言いたい。
日本は、江戸時代の終焉と共に、多くの豊かな文化も一緒に失ってしまった。いろんなものが一緒に葬られてしまった。
杉浦日向子の描く作品の根底にはそれがあり、その最たるものが「合葬」だった。
そしてこの映画も、きちんと「江戸時代の終わり」を告げて幕を閉じる。もう妖怪が悪戯することも龍が舞い降りることもない。

この映画、終わってみれば、懐の深い江戸文化を丹念に描写した作品に思えるのだが、一本芯の通った筋がないから、観ている最中退屈なんだよね。

2015年5月9日公開(2015年 プロダクションIG)

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