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インヒアレント・ヴァイス

インヒアレント・ヴァイス監督:ポール・トーマス・アンダーソン/ヒューマントラストシネマ渋谷/★4(88点)本家公式サイト

P.T.A.はP.M.H.
今回、原作トマス・ピンチョンというヒントをもらったので、なんだかポール・トーマス・アンダーソンの好みややりたい事が分かったような気がします。ま、分かったような気になってるだけですが。映画自体は、説明出来ないんですけど、すげー面白かった。

ポール・トーマス・アンダーソンはポスト・モダンのハードボイルド作家。
これが私の理解です。

矛盾や不条理を受け入れ、理想的な物語や典型的な物語を破壊する。これ、PTA作品すべてに通じる特徴だと思うのです。そしてそれは、ものすごーく雑に言っちゃえば、ポスト・モダン文学の特徴でもあるのです。

私の少ない知識で無理矢理まとめると、ポスト・モダンはモダニズム(近代的価値観)の否定。近代的価値観とは、極端な一面だけ言えば、国力が上がれば幸せになれるという思想。金が豊かさの象徴という資本主義思想も、社会主義国家がユートピアというのも同じ。科学技術の進歩が人類を幸福に導くという考えもそう。そういう直線的な「大きな物語」に対するカウンター。だから矛盾や不条理もあるし、従来型の物語では収まらない。おそらくPTAは大きな影響を受けているのでしょう。しばしば「洗脳」というキーワードを用いるのも、近代的価値観もまた洗脳の一つであると言っているように思えるのです。誘惑してねじ伏せろ!

さらに別な角度で見ると、PTAは「男の孤独」を通して社会を描くことが多い(単純に彼自身友達が少ないだけかもしれないけど)。
これはハードボイルドです。世間がハードボイルドに抱くニヒリズムでも内藤陳でもなく、「己を信じて己のために行動する孤独な男」がハードボイルドだというのが私の定義。PTAはハードボイルド作家でもあるのです。いや、ハードボイルドの先に世の中を描こうとしているのかもしれません。
特に今回の映画は、大上段に構えて世界を描くのではなく、主人公の視点で、主人公が手探りで世界の一端(時にそれは危険でもある)に触れてしまう。そんな映画。

そう考えるとPTAは、圧倒的に巧い映像センス(この映画の70年代感の素晴らしさ!)と、文学的センスを併せ持つ稀有な監督のような気がします。
前作『ザ・マスター』を私は「文学的すぎる」と評しましたが、それもポスト・モダンのハードボイルドだと思えばすごーく納得がいくのです(<いまさら)。

日本公開2015年4月18日(2014年 米)

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