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妻への家路

妻への家路監督:チャン・イーモウ/TOHOシネマズシャンテ/★4(75点)本家公式サイト

チャン・イーモウの『かくも長き不在』。『初恋のきた道』のアンサーソングにも思える。ソングじゃねーけどな。
JUGEMテーマ:映画
この映画は、互いに相手のことを一途に想いながら想いが届かないという純愛映画です。
その障害は距離でも時間でもなく“認知”。もしかすると新たなSFかもしれません(<んなことあるか)。

しかし私は、チャン・イーモウは一貫した裏テーマを持った作家だと思っています。
外貨稼ぎの娯楽大作を託されたりもするけど、失われつつある古き良き中国文化を描こうとしている人だと思うのです。

そりゃお前、ブレイク作『初恋のきた道』以前の話じゃないかと言われそうですが、『単騎、千里を走る。』なんかが分かりやすい。「私の父さん母さん」的な原題の『初恋のきた道』だって、チャン・ツィイーのトコトコ走りに騙されがちですが、古来の葬儀方法で送り出そうという話なのです。

で、この『妻への家路』は、古き良き文化として“食べ物”を出していると思うのです。
逃走中の夫に極秘で会いにいく際、饅頭を作っていくんですね。さっき書いた『初恋のきた道』チャン・ツィイートコトコ走りも似たようなことやってますけど。
また、正月には水餃子を作ります。つまりこの国は「食べ物を作る(贈答する)」ということが「心」の表現だったのでしょう。本来、食品偽装なんてあり得なかった国だったのかもしれません。
しかし、妻の作ったこれらの食事を夫は口にすることはないんですね。夫が夜食に作ったうどんは娘が食べるのに。なぜなら、夫が食事を口にしてしまったら、「すれ違う夫婦」という事態が解決しちゃうから。チャン・イーモウはちゃんと計算している。

チャン・イーモウが失われゆく文化を描くのは、「この国は失ってしまったものがある」と(声高でなくひっそりと)言っているのかもしれません。この映画では「文化大革命」が一因だと言っているように思えるのです。

私の勝手な推測ですけど、文化大革命というか共産主義の最大の失敗は、経済面だけでなく思想や文化の格差も平等化しようとした点にあると思うんです。
この映画の旦那はとてもインテリなのでしょう。逃走中も眼鏡をかけているし、ピアノも弾ける。文章も達者。でも、そういう人間を迫害・排除しようとする。上昇志向ではなく、上の者を引きずり下ろすことで平等化を計る。

前述しましたが、チャン・イーモウは決して声高に社会批判はしません。しかしそれでも、初期の頃はもっと鮮烈にもっとショッキングに事態を描写していた。いま『紅いコーリャン』を観たら目がチカチカするよ。
そう考えると、幸せ三部作やハリウッド大作を経て、だいぶ老成してきた感がある映画のような気がします。

日本公開2015年3月6日(2014年 中国)

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