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幕が上がる

幕が上がる監督:本広克行/新宿バルト9/★3(65点)本家公式サイト

アイドル映画としてよくまとまった脚本で手堅い映画だけど、ももクロの魅力を充分に引き出しているとは・・・。手堅くまとまらないところが魅力なのに。(レビューはももクロファンの長い能書き)
私はももクロ好きです。モノノフというほどではありませんが、結構なファンです。ライブDVD観て泣きます。カラオケで歌います。自分で歌いながら泣きます(<気持ち悪い)。だからこの映画、冷静な目で観られません。

この映画、話自体にももクロ自身のエピソードを多く盛り込み、ファンの「ウヒヒ」をイヤラシく誘うのです。

結成当初からのメンバー3人を同級生に設定し、後から入った最年少あーりんを後輩に、最後に入った有安杏果を転校生に設定します。歌と踊りが一番上手い有安が入ったことでデビューに近づいたももクロ同様、有安の加入で演劇部に幅が出ることになります。
また、転校生・有安は元の学校で声が出なくなったというエピソードがありますが、実際に喉を痛め歌うこともしゃべることもできない時期がありました。本当に滑舌悪いし、泣き虫だし。
黒木華先生が去ることで早見あかりの脱退を想起させ、ジュースやペンキを塗るシーンで色遊びをし、しおりん定番の「腹減ったー」発言を何度もさせる。しおりんが夏菜子ぉのベッドに潜り込むというのはツアーの際にホテルで実際にあるというエピソードだし、舞台前の「1,2,3・・・ファイト!オー!」は「出欠とります!Are you ready?番号」だし、夏菜子ぉは漢字書けないし、れにちゃんはビリビリしてる。

大技、小技を交え、ファン感謝祭的ではあるけれど、よくまとめられた脚本だと思うのです(松崎しげるや鶴瓶のカメオ出演はご愛嬌)。出演してさえいればファンが満足した80年代アイドル映画とは大違い。ももクロ自身をトレースしたストーリー。さらに言えば、紅白出場、国立競技場公演といった夢を果たしたももクロにとって、これから新たなステージの『幕が上がる』というダブルミーニングでもあるのです。

しかし逆に、ももクロをトレースすればするほど、ウヒヒウヒヒ言いながら、「ももクロの魅力はそこじゃない」とも思ってしまうのです。

「モー娘は能力、AKBは努力、ももクロは全力」という批評がありますが、ももクロの魅力は“一生懸命さ”とよく言われます。それはそれで事実です。そしてこの映画も、「高校演劇に全力の少女たち」というコンセプトで企画されたのだと思います。
しかし本質はもう少し先にると私は思うのです。ももクロの魅力の本質は“全力”であることを彼女たち自身が“楽しんでいる”点にあるのです。苦労や努力はエピソードであって、メインの売りではないのです。

しかしこの映画は −それは青春映画として当然のドラマツルギーではあるのだが− 悩んだり苦労したりする成長譚としてまとめられます。手堅くまとまった映画ですが、ももクロは手堅くまとまらないところが魅力なんです。もっとバカでいい。だってバカなんですもん。1日3公演=6時間65曲もの試練や曲目もセットも全く異なる2daysとか様々な試練(大人の仕掛けた罠)を与えられて、それを泣きながら全力で駆け抜けて、結局「楽しかったことしか覚えてない」って言うんだぜ。
だから、バカやって、ちょっとした瞬間にマジになる。そんな映画であってほしかったと思ってしまうのです。むしろ矢口史靖映画の方が向いていたのかもしれません。

本音を言えば、アイドル映画じゃなくて、平田オリザ原作なんだから、高校演劇そのものの面白さをもっと観たかった。なんなら「もしも高校野球の女子マネージャーが青森県の“イタコ”を呼んだら」が観たいもん。
もっとも平田オリザ自身が「正統派アイドル映画を創って欲しい」と言ったそうだから、それはそれで成功なのかもしれませんけど。

ラストに「走れ!」でPV風になるでしょ。ああいうのいらない。まあ、この選曲もある意味映画的仕掛けで、映画『モテキ』でも使用され、サブカル人間がももクロ好きでいいというお墨付きをもらった曲でもあるんですよ。でもいらない。だって、それだったらライブDVD観た方がナンボか魅力的だし、そもそも「エンディングPV」は大林宣彦の『時をかける少女』以上の衝撃作はないもの。

2015年2月28日公開(2015年 フジテレビ=東映)

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