ブニュエル、メキシコ時代の一本で、前半はあれよあれよという間の群像劇、後半はあれよあれよという間のサバイバル劇。
なんだそれ?って感じもあるんだけど、当時としてはかなり金も手間も掛かっていて、実は娯楽大作として作られたんじゃないかと思うのです。
そしてブニュエルの演出も意外に手堅いんです。
たしかに、宣教師、犯罪者、娼婦、生娘、老人と何やら意味ありげな(しかしきっと大して意味はない)人物だけを残すあたり、実にブニュエルらしいんですが、演出が思いの外しっかりしている。へえ、こんな所でレール引いて移動撮影するんだ、ずいぶん丁寧な撮影してるな、とか。
いや、ブニュエルは決して下手な人じゃないんです。不思議なエピソードを撮りたがるからオカシナ印象を持つだけで。
この人、本気出したらちゃんとしたものを撮れるだと再確認した映画。
言わば、ピカソの初期作品が普通に巧かったのと同じなんじゃないかと。基礎がちゃんとできてるから崩せるんだなということを再認識した作品。
やっぱり密林って人間の深層に迫るものがあるのかね。そしてまた文明が人間を欲の塊にしていくのさ、って映画。ブニュエルらしい視点。
(1956年 仏=メキシコ)
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